【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

亡くなった後に老人ホームの入居一時金の返還を受けた場合の取扱い

相続税専門税理士の富山です。

今回は、老人ホームに入所していた方が亡くなり、その入居一時金の一部が返還された場合の取扱いに関する裁決・判決について、お話します。


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入居一時金の返還金を受取人のものであるとした裁決

出典:TAINS(F0-3-354)(一部抜粋加工)
平25-02-12裁決

被相続人がA社と締結した介護型老人ホームの入居契約では、入居者は自分が死亡した場合の入居一時金の返還金の受取人1名を定めることとした上で、入居者が死亡した場合、A会社は上記返還金受取人に対して返還金を返還することとする条項が存するが、入居契約には、入居者が死亡した場合に、返還金受取人となっていない入居者の相続人に返還金を返還することを可能とする条項は存しないことに照らすと、入居契約に存する上記返還金受取人に関する条項は、返還金の返還を請求する権利者を定めたものというべきである。

上記のとおりの入居契約の内容によれば、入居契約のうち入居一時金の返還金に係る部分は、入居者(被相続人)とA社との間で締結された、入居者死亡時の返還金受取人(請求人)を受益者とする第三者のためにする契約であって、入居者死亡時の返還金受取人は、入居契約により、入居者の死亡を停止条件として、A社に対して直接返還金の返還を請求する権利を取得したものと解すべきである。したがって、本件返還金は被相続人の相続財産であるということはできず、これを前提とする原処分庁の主張は、採用することができない。

実質的にみて請求人は、第三者(請求人)のためにする契約を含む入居契約により、相続開始時に、被相続人に対価を支払うことなく、同人から入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利に相当する金額の経済的利益を享受したというべきである。したがって、請求人は、当該経済的利益を受けた時、すなわち、相続開始時における当該利益の価額に相当する金額を被相続人から贈与により取得したものとみなす(相続税法第9条)のが相当である

そして、請求人は、被相続人から相続により他の財産を取得していることから、相続税法第9条の規定により被相続人から贈与により取得したものとみなされる利益の価額(本件返還金と同額)は、当該他の財産に加算され、相続税の課税対象となる(相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項)。したがって、本件返還金の額は、請求人の本件相続税の課税価格に算入されるべきである。

入居一時金の返還金は、入居の際の契約において、返還金受取人と定められた方のものである、としています。

入居一時金の返還金は相続財産(遺産分けの対象)とした判決

出典:TAINS(Z266-12781)(一部抜粋加工)
平成28年1月13日判決

被相続人が事業者の設置する介護型有料老人ホームの居室に入居する旨の入居契約に係る入居契約書の各条項によれば、本件返還金は、入居契約の解除又は終了に伴う原状回復又は不当利得として返還されるものであって、受領すべき者は本来入居契約の当事者であると解され、入居契約において返還金受取人は1名を定めるとされていることにも照らせば、被相続人死亡の場合には、単に受領すべき被相続人が死亡している以上、被相続人が受領することができないため、事業者の返還事務の便宜のために予め入居契約においてこの場合の親族の代表者としての受取人が指定されているにすぎず、指定された受取人に当然に返還金全額を帰属させる趣旨ではないというべきである

入居一時金を拠出したのは亡くなった方なのだから、入居一時金の返還金も亡くなった方のもの、つまり、相続財産であり、受取人の指定は便宜上の定めである、としています。

入居契約書において、入居一時金の返還をどのように定めているか、確認しましょう。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

ちなみに、2つ目の平成28年1月13日判決の方は、最高裁で確定しています。

出典:TAINS(Z266-12863)(一部抜粋加工)
平成28年6月2日決定

納税者は控訴しましたが、控訴審でも地裁判決が支持されました。納税者が上告したのが本件ですが、上告は不受理決定がなされました。