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「相当の対価」ではないとして小規模宅地等の特例が認められなかった事例

相続税専門税理士の富山です。

今回は、地代が安かったため、小規模宅地等の特例が認められなかった裁決事例について、お話します。

「相当の対価」についてのこちらの記事もご覧ください。

想う相続税理士秘書

貸付事業用宅地等に該当するための「相当の対価」とは? 特定同族会社事業用宅地等にも「相当の対価」要件がある!

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「相当の対価」の定義はない

出典:TAINS(J49-4-25)(一部抜粋加工)
平07-01-25裁決
本件B物件については、長女に対する賃貸料が付近の通常の賃貸料に比し著しく低廉と認められるので、相当な対価を得て貸し付けられていたとはいえず、さらに、賃貸借契約書は存在せず、賃貸借期間の定めもなかつたので継続的に貸し付けられていたとも認められないので、事業の用に供されていたとは認められないから、小規模宅地等の特例の対象となる宅地等には該当しない

上記の記事でお話したとおり、相続税の申告における小規模宅地等の特例の適用において、「貸付事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」に該当するかどうかの要件として、「『相当の対価』を得て継続的に貸付けが行われているか」というモノがあります。

ところが、この「相当の対価」については明確な定義がありません。

124.33㎡を月5万円で貸すのは安い?

P市S町5番2所在の宅地
124.33平方メートル(以下「本件B物件」という。)

Eは、本件B物件の賃借料が安かつたのは、同人が管理していたGマンシヨンの管理料が安かつたためであると主張するが、小規模宅地等の特例の該当要件である相当の対価を得ていたかどうかについては、相続開始の直前において、相当の対価を現実に得ていたかどうかという客観的事実により判断するのが相当であるから、本件B物件が小規模宅地等の特例の対象となる宅地等に該当するためには、相続開始の直前において被相続人が得ていた月額50,000円の賃貸料が相当の対価であつたと認められることが、まず必要である。

「相当の対価」かどうか(妥当かどうか)は、主観や個人的な事情により判断されるモノではなく、客観的な判断が必要である、としています。

周辺の賃料相場を元に「相当の対価」か判断された

C そこで、当審判所が、本件B物件の存する周辺地域における不動産の賃貸料を調査したところ、平成3年において次の事例が認められる。
(A) 周辺地域の土地131.77平方メートルを複数の者に対して月ぎめ駐車場として賃貸し、年間1,772,000円の賃料(1平方メートル当たり13,447円)を受領しているもの。
(B) 周辺地域の土地約132平方メートルを一人に建物の建設等以外の目的(更地として利用)で賃貸し、年間2,400,000円の賃料(1平方メートル当たり18,181円)を受領しているもの。
D 当審判所が、原処分関係資料を調査したところ、Eが本件B物件を月ぎめ駐車場として第三者に賃貸して得ていた賃貸料収入は、平成2年分1,910,000円及び平成3年分1,705,000円である。
E そうすると、本件B物件のEに対する賃貸に伴う賃貸料は、1平方メートル当たり4,825円であるから、上記Cの周辺地域における賃貸料1平方メートル当たり13,447円及び18,181円並びに上記Dに記載のEが本件B物件を月ぎめ駐車場として第三者に賃貸している賃貸料と比較して著しく低廉と認められるので、当該賃貸借は、相当な対価を得て行われたものとはいえない

今回の事例では、特例を適用した宅地等の周辺地域の賃料相場と比較して「著しく低廉と認められる」として、その賃料は「相当の対価」ではない、したがって小規模宅地等の特例の適用は認められない、とされました。

想う相続税理士

実際の申告において「相当の対価」かどうかを周辺地域の賃料相場と比較して検討する場合、特例の適用を検討する宅地等と同じような状況にある土地をサンプリングしましょう。

また、サンプリングの数を増やして、判断の客観性を確保しましょう。