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相続開始後の時効期間経過により時効取得された土地の相続税申告における取扱い

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産である土地が、相続開始後の時効期間経過により時効取得された場合の、相続税申告における取扱いに関して争われた判決について、お話します。

出典:TAINS(Z252-9167)(一部抜粋加工)
平成14年7月25日判決


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時効取得とは?

民法(一部抜粋)
第二節 取得時効
(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

土地を占有され、何の対策もしないまま一定期間が経過すると、その土地の所有権をその占有者に取得されてしまう場合があります。

土地を相続で取得した後、時効期間が経過し、その土地を占有者に取得されてしまった場合、その土地は相続財産に含めなければならないのでしょうか(その土地の分も相続税を納めなければならないのでしょうか)?

相続開始時点では誰のモノ?

時効による所有権取得の効力は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効により利益を受ける者が時効を援用することによって始めて確定的に生ずるものであり、逆に、占有者に時効取得されたことにより所有権を喪失する者は、占有者により時効が援用された時に始めて確定的に所有権を失うものである。そうすると、民法144条により時効の効力は起算日に遡るとされているが、時効により所有権を取得する者は、時効を援用するまではその物に対する権利を取得しておらず、占有者の時効取得により権利を失う者は、占有者が時効を援用するまではその物に対する権利を有していたということができる。したがって、本件においては、本件相続開始時においては、本件各土地について、Bらによる時効の援用がなかったことはもちろん、時効も完成していなかったのであるから、その時点では、控訴人らが本件各土地につき所有権を有していたものである。

相続開始時点では、まだ時効が援用されていないため、占有者のモノになっていません。

ということは、その土地は相続で取得(今回の例では遺贈により取得)した方のモノということになります。

取得した後に時効が完成している

時効の完成も援用も本件相続開始後である本件において、納税者らは著しい不注意によって時効中断の措置を執らなかったのであるから、相続税の更正の請求が認められないとしても、それは納税者らに帰責事由があったことによるものであり、国税通則法23条2項の趣旨に照らし、やむを得ないものであるというほかない(原審判決引用)

相続で土地を取得した後、時効中断の措置を執れば、その土地を時効取得されなくて済んだのだから、その土地を除外して相続税の申告をやり直すこと(更正の請求)は認められない、とされました。

想う相続税理士

「民法144条に規定する時効の遡及効により、時効取得者は占有開始時に遡って本件各土地の所有権を取得したことになり、よって、本件各土地についての遺贈又は相続は無効となる(原審判決引用)」という納税者の主張も認められませんでした。