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遺言作成は相続対策の王道
遺言は相続対策に有効です。
想う相続税理士
その遺言に書かれた通りに財産を分けることができますから。
文句を言う人がいなければ。
遺言は完璧ではない
遺言の通りに財産を分けられないケースがあります。
正確に言うと、遺言(自筆証書遺言等の場合には、家庭裁判所での検認の手続きが必要です)の通りにいったんは財産を分けることができますが、後から他の相続人に「よこせ」と言われて渡さなければならない場合があるということです。
「よこせ」と言われなければ、遺言の通りに財産を取得できます。
「よこせ」と言える根拠は、「遺留分」です。
聞いたことありますよね?
遺留分は近い親族のためにある
遺言を作成した方は、遺言の通りに財産を分けたいのです。
でも、遺留分があると、その遺言の通りに分けられない(自分が財産を渡すと遺言に書かなかった相続人に財産を渡すことになる)。
つまり、相続人のために遺留分はある、ということです。
残された近い親族が、相続後に生活できなくなるようなことがないように、最低限の財産は確保させてあげよう、と配慮されているのです。
遺留分は「割合」
「最低限の財産の確保」と言いましたが、それは「金額」ではなく、取得する「割合」です。
相続財産が多ければ多いほど、遺留分の金額も大きくなる、ということです。
相続人が子供のみであれば、遺留分は1/3ですので、全体の1/3は子供たちに相続する権利があります。
残りの2/3は、遺言作成者の希望通りになります。
相続人が配偶者と子供であれば、遺留分は1/2です。
遺留分を考慮した遺言を作成する
せっかく作成した遺言なのに、その通りに財産が分けられなかったら、ガッカリですよね?
そのような場合には、遺留分を考慮した遺言を作成しましょう。
「よこせ」と言われないように、遺言であげておくのです。
遺留分逃れの贈与は意味がない
「相続の時に財産があるから『よこせ』と言われるのだ!財産をあげたい親族に、生前に贈与しておけばいいのだ!」と考えた方はいませんか?
実は「遺留分」は、相続時の相続財産だけではなく、これに生前の贈与財産を加算して計算します。
ですから、生前に贈与してしまえば、その財産は請求してきた相続人にあげなくていい、という訳ではないのです。
この生前の贈与には、「学費の負担」や「不動産をタダ借りしていたこと」なんかも含まれることがあります。
それでも遺言はあった方がいい
「遺言なんて作っても意味がないのか?」
そんなことはありません。
100%自分の意図した通りに財産を分けられない遺言ですが、絶対に作成した方がいいです。
遺言がなく、遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所での調停等になり、法定相続分で遺産分けすることになるでしょうから。
遺留分のない相続人がいた
この「遺留分」、近い親族のためだと言いました。
つまり、遠い親族だと、この遺留分がないんです。
具体的には、兄弟姉妹が相続人になるケースです。
お亡くなりになった方に、お子さんがいらっしゃらなくて、両親なども既にお亡くなりになっている場合です。
相続人は、(1)お子さん→(2)両親→(3)兄弟姉妹の順になります(配偶者は常に相続人。お子さんに「子」がいれば「子」、その他も同じ。)。
(1)(2)に該当する方がいない、または、既にお亡くなりになっている場合には、(3)の兄弟姉妹が相続人になるのです。
この「兄弟姉妹」には、遺留分がありません。
兄弟姉妹に財産をあげたくなければ、あげなくてよい、つまり、遺言の通りに遺産分けできるのです。
「配偶者」対「兄弟姉妹」の遺産争いを回避する
相続人が配偶者と上記(3)の兄弟姉妹の場合、遺言を作成しないと、遺産分割協議が必要となります。
亡くなったのが夫であれば、嫁と旦那の兄弟の話し合いです。
話しづらいですよね。
それが不調に終わると、家庭裁判所での審判等になります。
兄弟姉妹に法定相続分を渡す流れです。
遺言があれば、全財産を配偶者に渡せます。
遺言を作成しないと配偶者は納税も大変
配偶者が財産を相続した場合、配偶者の税額軽減という特例を受ければ、最低でも1億6,000万円までの財産については、相続税は非課税です。
ところが、これは遺言や遺産分割協議により、「配偶者が取得すること」が確定した財産に対して適用されます。
遺産分けでモメている場合には、使えないのです。
モメていても、税務署は申告を待ってくれません。
特例なしで申告です。
相続財産は、モメている間は解約等ができませんから、配偶者は、通常だったら大きな非課税特例があり、相続税を払わずに済むのに、いったん自腹で相続税を納める必要が出てくるのです。
モメていて財産が未分割の場合、各相続人は、財産を法定相続分で相続したものとみなして計算した相続税を納めます。
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の法定相続分は3/4となります。
つまり配偶者は、全体の相続税の75%を納付しなければならないのです。
相続人が「配偶者」と「兄弟姉妹」になるパターンにおいては、遺言は「必須アイテム」です。