相続税専門税理士の富山です。
今回は、先日、過去の預金の動きについてお客様とお話していたところ、「ペイオフ対策」という言葉が出てきましたので、今回は、ペイオフについて、お話します。
ペイオフとは?
「ペイオフ」とは、銀行などの金融機関が破綻してしまった場合に、一定金額の保険金が支払われる仕組みのことをいいます。
金融機関に預金をすると、その預金には、預金保険法という法律により保険がかけられます。
金融機関が破綻した場合には、預金者に、その保険による保険金が支払われます。
この場合、有利息の普通預金や定期預金などについては、合算して元本1,000万円(とその利息)までが保険による保護の対象となります。
そうすると、3,000万円の預金があった場合には、1,000万しか返ってこず、2,000万円は返ってこない可能性がある、ということになります(破綻した金融機関の財産の状況に応じて、1,000万円を超える部分も返ってくる場合があります)。
ペイオフ対策とは?
万が一、預けていたお金が全部戻ってこないとなると、大変です。
上記の元本1,000万円というのは、「預金者1人当たり」「1金融機関ごと」に合算、ということになっています。
ですから、3つの金融機関に1,000万円ずつ預金がある場合には、それぞれ全額保護されるということになります。
また、当座預金や無利息の普通預金については全額保護の対象となっていますので、そういった預金に移し替える方もいます。
他の金融機関にお金が移せない場合には?
長年の銀行との付き合いで、他の金融機関にお金が動かせない、といったような場合や、他の金融機関に新規の口座を開設するのが大変、面倒くさい、といった場合に、同じ金融機関で家族名義の預金口座を開設し、その口座にお金を移す、ということを考える方もいらっしゃいます。
1,000万円までというのは、「預金者1人当たり」の金額だから、他の預金者の預金だったら大丈夫、という考え方です。
しかし、これは保護の対象とはなりません。
このブログで何度もお話ししている「名義預金」になってしまいます。
ペイオフ対策ということは、自分のお金が守られるように他の口座にお金を動かす、ということになりますので、結局そのお金は自分のモノ(同じ1預金者のモノ)だ、ということになります。
つまり、家族の名義を借りて自分のお金を積んでいるワケですから、それは別の預金者の預金にはなりません。
知るぽると(金融広報中央委員会)
ペイオフをご存知ですか?(一部抜粋)
家族であっても、夫婦や親子はそれぞれ別の人格を有する法的主体であるため、その名義に従い別個の預金者として保護の対象となります。ただし、家族の名義を借りたに過ぎない預金等は、他人名義預金として保険の対象外となるため、注意が必要です。
もし、それでも保護の対象にしたい、ということであれば、実際にきちんと贈与するしかありません。
しかし、一度に1,000万円の贈与をすると、相手の方との関係や相手の方の年齢により、231万円、または、177万円の贈与税が課税されます(暦年贈与・相手の方が他に贈与を受けていない、という前提で計算)。
その場合、贈与をきちんと成立させる、ということも必要です(相手の方に内緒で贈与することはできません)。
想う相続税理士
相続税法基本通達
9-9 財産の名義変更があった場合
不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。