【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

詰めが甘いと物納で余計な所得税が発生する!

この記事の結論
相続税の物納制度は、納税者にとって、有利な制度です(誰でも使える訳ではありません)。申請時の手続きに手間がかかりますが、その後、相続税の申告が修正申告となった場合にも、追加で納めることになった部分について忘れずに物納申請をしないと、その有利な面の恩恵を受けられなくなります。

物納は、相続税が現金で支払えない場合、物で払う制度

相続税1,000万円が現金で用意できない場合、1,000万円の土地を国に渡す

通常、1,000万円の土地を売った場合、その儲けには所得税・住民税がかかる

1,000万円の売却収入が入っても、所得税・住民税がかかる分だけ、手元に残るのは(実際の手取り額は)1,000万円よりも少なくなる

この場合の所得税・住民税が仮に200万円だとすれば、手元に残るのは800万円

1,000万円の土地を不動産会社に売って、1,000万円の相続税を国に支払う場合、手元に残るのは800万円なので、200万円納税資金が不足する

しかし、物納で直接国に1,000万円の土地を渡せば、1,000万円の相続税がチャラになる

つまり、物納は所得税・住民税が非課税

また、国は相続税の評価額で買い取ってくれる

不動産会社の場合、相続税の評価額が1,000万円でも、実勢価格が700万円であれば、700万円でしか買ってくれない

物納申請をした後、その土地の評価額の計算が間違っていて、本当はもっと評価額が高かった、ということが判明した場合、相続税の申告について、修正申告をすることになる

この時、物納申請書も提出する必要があるので、注意が必要

≪例≫
(当初申告)
全財産:5,000万円
物納する土地の評価額:200万円
相続税:200万円

(修正申告)
全財産:5,100万円
物納する土地の評価額:300万円
相続税:260万円

当初申告時は物納申請税額を200万円として申請している

修正申告時に物納申請書を提出しないと、物納申請税額は200万円のまま

そのままだと、うまくいっても物納許可額200万円で、修正後相続税額260万円と差額60万円は物納扱いされない

300万円の土地を買い取ってもらうことになっても、物納扱いされない部分は国に対する通常の譲渡(「超過物納」といいます)となり、所得税・住民税の課税対象になってしまう

想う相続税理士

この場合、修正申告時に物納申請書を提出しても、土地300万円と相続税260万円の差額部分40万円は、超過物納扱いとなります。

物納申請書を提出しないと、土地300万円と当初物納申請税額200万円との差額部分100万円が、超過物納扱いとなりますので、ご注意を。