相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における無道路地の評価について、お話します。
財産評価基本通達における無道路地の評価方法
「無道路地」とは、ザックリ言うと「道路に接していない宅地」です。
そのような無道路地については、財産評価基本通達において、下記のように評価方法が定められています。
財産評価基本通達(一部抜粋)
20-3 無道路地の評価
無道路地の価額は、実際に利用している路線の路線価に基づき20《不整形地の評価》又は前項の定めによって計算した価額からその価額の100分の40の範囲内において相当と認める金額を控除した価額によって評価する。この場合において、100分の40の範囲内において相当と認める金額は、無道路地について建築基準法その他の法令において規定されている建築物を建築するために必要な道路に接すべき最小限の間口距離の要件(以下「接道義務」という。)に基づき最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額(路線価に地積を乗じた価額)とする。
無道路地については、評価額の最大40%相当額を控除して申告する、ということなのですが、何を控除しているかというと、ただ単純に40%ぐらいは価値が下がるだろう、ということではなく、「最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額」、つまり、「仮の『通路開設費用相当額』」の意味合いがあるのです。
40%の減額じゃ話にならない場合もある
上記の「通路開設費用相当額」は、ザックリ言うと、正面路線(路線価50,000円)から評価対象地までの距離が10mの場合、
50,000円×10m×2m(建築基準法上、道に接していなければならない距離)=1,000,000円
と計算します。
この金額が評価額の40%を超えた場合には、40%部分しか控除できません。
「道路に接していない宅地」ということは、「建物の建築不可(建替不可)の土地」ということです。
土地の形状や位置等によっては、評価額の40%分しか控除できないとなると、評価額が時価よりもかなり高くなってしまう可能性があります。
不動産鑑定評価による評価額が妥当と認められた事例
算定に若干の問題があるモノの、その金額を上回る時価を認めるに足る証拠がないとして、不動産鑑定による評価額で評価してOKとされた事例があります。
出典:TAINS(Z267-13024)
大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第259号相続税更正処分取消等請求事件(一部認容・棄却)(控訴)
国側当事者・国(豊能税務署長)
平成29年6月15日判決
無道路地補正によっても十分に考慮されていない特別な事情がある土地の評価は評価通達ではなく不動産鑑定価額によるとされた事例
相続税法の趣旨に鑑みれば、評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、特別の事情がない限り不動産の客観的な交換価値として適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当であると判断しています。
無道路地である丙土地は、通路開設費用相当額が不整形地補正後の価格すら上回る金額であり、無道路地補正によっても十分に考慮できてはおらず評価通達によって適正な時価を算定することができない特別な事情があるといえるため不動産鑑定評価額を時価と評価するとしました。他の土地については、特別な事情がないため評価通達による算定された評価額が採用されました。
想う相続税理士
しかし、土地を評価する場合には、時価評価(実勢価格等)だったらいくらになるか、を意識し、計算した相続税評価額が高く計算されていないか、検討するようにしましょう。