【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

土地建物が一部分割された時点で小規模宅地等の特例の話がまとまらなければ終わり

相続税専門税理士の富山です。

今回は、小規模宅地等の特例の適用要件について、お話します。


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相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?

相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。

どの適用パターンの場合でも、「取得者要件」があります。

もし、遺産分けの話し合いがまとまらず、小規模宅地等の特例の適用対象となる土地の取得者が決まらなければ、小規模宅地等の特例は適用できません。

申告期限後3年以内の分割見込書を提出する

上記のような場合、「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割します!」という「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書と一緒に提出することで、3年以内に遺産分けの話し合いがまとまって相続税の申告をやり直す際に、小規模宅地等の特例が適用できる可能性を残すことができます。

適用可能な土地の取得者全員の同意が必要

「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」には、次のような注意書きがあります。

(注) 小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等を取得した全ての人の同意がなければ、この特例の適用を受けることはできません。

「遺産分けの話し合い」がまとまっても、「どの土地に小規模宅地等の特例を適用するかの話し合い」がまとまらなければ、小規模宅地等の特例を適用することはできません。

先に土地建物だけ遺産分けの話し合いがまとまった場合

相続税の申告をする際、全部の財産については遺産分けの話し合いがまとまらないけれども、土地建物についてはまとまった、という場合、「全部の財産についての遺産分けが決まったら、それを踏まえて『どの土地に小規模宅地等の特例を適用するか』も決めたい、だから『申告期限後3年以内の分割見込書』を提出しておいて、全部の財産のついての遺産分けが決まった際に小規模宅地等の特例を適用したい」とお考えになる場合もあるでしょう。

しかし、それはできません。

土地建物については遺産分けが決まっているんですから、小規模宅地等の特例を適用したければ、「どの土地に小規模宅地等の特例を適用するか」も決めて、小規模宅地等の特例を適用して申告しなければならないのです。

そこで適用しなかったら、後からは適用できません。

出典:TAINS(相続事例大阪局R050000)(一部抜粋加工)
誤りやすい事例(相続税関係 令和5年版) 大阪国税局資産課税課
(更正の請求による特例の適用)
【誤った取扱い】
24 法定申告期限内に、不動産(土地、建物)については分割協議が成立したが、預金等については成立しなかったため、小規模宅地等の特例対象宅地等の選択について、他の相続人の同意が得られなかった。
その後、全部の財産の分割協議が成立し、特例対象宅地等の選択についての同意が得られたので、更正の請求をした。
【正しい取扱い】
24 法定申告期限内に分割されている特例対象宅地等については、法令上、更正の請求により小規模宅地等の特例を認める旨の規定がないことから、同特例を適用することはできない(措法69の4④、⑦)。

想う相続税理士

上記の【正しい取扱い】には、次の続きがあります。

山林がある場合には、ちょっと話が変わってきます。

ただし、法定申告期限内に分割されている特例対象宅地等について、特例対象山林(措法69の5②四イに掲げるもの)が未分割であることにより、同特例の適用を受けていない場合には、原則として、法定申告期限から3年以内に分割されたときは、更正の請求により同特例を適用することができる(措法69の4⑤、措令40の2㉔)。