相続税専門税理士の富山です。
今回は、「もらいます」と言わなければ、贈与は成立しないのか、ということについて、お話します。
贈与税を納めるのは誰?
贈与税の納税義務者は、贈与により財産を取得した方のうち、贈与税がかかる方です。
その贈与を受けた方が、贈与により財産を取得した年の翌年2/1から3/15までの間に、贈与税の申告と納税をする必要があります。
贈与はどのように成立する?
民法(一部抜粋)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
贈与は、あげる側・もらう側の「あげます」「もらいます」という意思表示により成立します。
でも、贈与って、大体が親族間(特に親子間や祖父母孫間)で行われることが多いと思うのですが、わざわざ「あげます」「もらいます」って意思表示しているでしょうか?
阿吽(あうん)の呼吸的な場合ってないでしょうか?
親が勝手に登記と申告をしたと言っても認められなかった事例
祖父母や親と孫との間の贈与で、祖父母や親の方の力が強いと、子供が納得していないのに、どんどん手続きを進めてしまうことも予想されます。
出典:TAINS(Z257-10634)
東京地裁平成19年2月16日判決
祖父母が所有していた土地について、贈与を原因とする祖父母から原告らに対する持分移動登記が存在し、当該贈与に係る原告ら名義の贈与税期限後申告書が税務署長に提出されているところ、原告らは、当該登記手続及び申告書の提出は、いずれも原告らの父が無断で行ったものであり、当該贈与税の租税債務は存在しない
しかし、この判決は取り消されました。
出典:TAINS(Z257-10783)
東京高裁平成19年9月20日判決
被控訴人らは父母と同居していたことや税務署から贈与税申告の指導があったこと、被控訴人ら名義の賦課決定通知書等の書類を受領していること、国税局係官との間で贈与税の減免等の協議をしていること、本件訴訟提起に至るまで本件贈与税等について異議を申し出ていないこと等の事情を総合勘案して、被控訴人ら名義の申告を父が代理人として行ったものであるとしました。また、代理権の授与等がなかったとしても、被控訴人ら名義の申告がされたことを知り、これを追認したものと認めるのが相当であるとし、納税者敗訴となりました
「ノー」と言わなければ、「イエス」と言っているのと同じ、ということです。
想う相続税理士