相続税専門税理士の富山です。
今回は、同族会社にタダで貸している土地がある場合の、相続税申告時のデメリットについて、お話します。
400㎡まで8割引きで評価できる特例がある
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、その特例の適用パターンの中に「特定同族会社事業用宅地等」があります。
「一定の同族会社の事業の用に供されていた宅地等」が対象となります。
タダで貸していると事業にならないからダメ
特定同族会社事業用宅地等に関する通達の条文を見てみます。
租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
69の4-23 法人の事業の用に供されていた宅地等の範囲
措置法第69条の4第3項第3号(特定同族会社事業用宅地等)に規定する法人の事業の用に供されていた宅地等とは、次に掲げる宅地等のうち同号に規定する法人の事業の用に供されていたものをいうものとする。
(1) 当該法人に貸し付けられていた宅地等(当該貸付けが同条第1項に規定する事業に該当する場合に限る。)
(2) 当該法人の事業の用に供されていた建物等で、被相続人が所有していたもの又は被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族が所有していたもの(当該親族が当該建物等の敷地を被相続人から無償で借り受けていた場合における当該建物等に限る。)で、当該法人に貸し付けられていたもの(当該貸付けが同項に規定する事業に該当する場合に限る。)の敷地の用に供されていたもの
太字のところを見てみます。
租税特別措置法(一部抜粋加工)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
事業(事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む。同項において同じ。)
さらに太字のところを見てみます。
租税特別措置法施行令(一部抜粋加工)
第40条の2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
法第69条の4第1項に規定する事業に準ずるものとして政令で定めるものは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの(第7項及び第19項において「準事業」という。)とする。
「相当の対価を得て継続的に行うもの(事業)」である必要があります。
つまり、タダで貸している場合には、その貸付けが事業に該当しないため、適用を受けることができません。
また、「相当の対価を得て」ですから、会社から1円でももらえばタダにはならないからOKというワケではありません。
特例の適用を受けるためには、一定の金額をもらって貸す必要があります。
デメリットは小規模宅地等の特例だけではない
同族会社が亡くなった方から土地を借りて、その上に建物を建てて、事業の用に供していた場合(亡くなった方と同族会社との間に土地の賃貸借があるパターン)、会社からキチンと地代をもらっていれば、その土地は貸宅地として借地権を控除して評価することができます(「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合には80%評価)。
借地権を控除した上に、要件を満たせば、さらに特定同族会社事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用も受けられるのです。
これがタダ貸しだと、どちらの適用も受けられません。
相続税に与える影響にはかなり差が出ます。
亡くなった方が、その同族会社の株式を所有していた場合、その株式も相続財産に該当します。
キチンと地代のやり取りをすることによって、その同族会社の株式を評価する際、純資産価額の計算上、借地権が計上されることになりますが(「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合には、土地の自用地としての評価額の20%相当分)、同族会社の株式は、類似業種比準価額と純資産価額を折衷して計算するため、借地権の計上がダイレクトに株価の上昇に結びつくことはほとんどありません。
想う相続税理士
また、同族会社が土地を借りるのではなく、亡くなった方の土地の上の(亡くなった方が建てた、または、亡くなった方の生計一親族が建てた)建物を借りて、事業の用に供している場合(亡くなった方(また亡くなった方の生計一親族)と同族会社との間に、建物の賃貸借があるパターン)でも、会社からキチンと家賃をもらっていれば、その土地を貸家建付地として評価できるため、上記同様に安く評価できます。
土地の評価が下がって終わりです。
想う相続税理士秘書
想う相続税理士