相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における国外財産の評価について、お話します。
円換算する場合の為替レートは決まっている
財産評価基本通達(一部抜粋)
4-3 邦貨換算
外貨建てによる財産及び国外にある財産の邦貨換算は、原則として、納税義務者の取引金融機関(外貨預金等、取引金融機関が特定されている場合は、その取引金融機関)が公表する課税時期における最終の為替相場(邦貨換算を行なう場合の外国為替の売買相場のうち、いわゆる対顧客直物電信買相場又はこれに準ずる相場をいう。また、課税時期に当該相場がない場合には、課税時期前の当該相場のうち、課税時期に最も近い日の当該相場とする。)による。
なお、先物外国為替契約(課税時期において選択権を行使していない選択権付為替予約を除く。)を締結していることによりその財産についての為替相場が確定している場合には、当該先物外国為替契約により確定している為替相場による。
(注) 外貨建てによる債務を邦貨換算する場合には、この項の「対顧客直物電信買相場」を「対顧客直物電信売相場」と読み替えて適用することに留意する。
亡くなった方が外貨預金を所有していた場合、相続税の申告においては、相続開始日の「対顧客直物電信買相場(TTB)」により円換算して評価します。
現金や預金などは、例えば「10,000アメリカドル」というように、金額が「10,000」と出ているため、あとは円換算するだけですから、評価はある意味ラクです。
では、、亡くなった方が不動産や非上場株式を所有していた場合、どのように対応すればいいのでしょうか?
国外財産だから外国の相続税の決まりに従って評価する?
財産評価基本通達(一部抜粋)
5-2 国外財産の評価
国外にある財産の価額についても、この通達に定める評価方法により評価することに留意する。
なお、この通達の定めによって評価することができない財産については、この通達に定める評価方法に準じて、又は売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものとする。
(注) この通達の定めによって評価することができない財産については、課税上弊害がない限り、その財産の取得価額を基にその財産が所在する地域若しくは国におけるその財産と同一種類の財産の一般的な価格動向に基づき時点修正して求めた価額又は課税時期後にその財産を譲渡した場合における譲渡価額を基に課税時期現在の価額として算出した価額により評価することができる。
相続財産が国外財産だとしても、日本の相続税を計算するワケですから、日本の財産評価基本通達に従って評価します。
財産評価基本通達が国外財産の評価に適していない場合にはどうする?
国外の土地や建物は、路線価や倍率が定められていませんので、財産評価基本通達に従って評価することができません。
したがって、売買実例価額や公表されている公示価格的な金額をベースに評価することになります。
また、非上場株式については、日本の類似株価等と比較することは当然できませんし、外国の類似株価等は入手できませんから、実務上は純資産価額方式により評価することになるものと思われます(少数株主の場合には配当還元方式)。
その場合には、例えば「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」を求める際の税率は、日本の税率では不適当ですから、その外国の税率を適用することになるでしょう。
ただし、国外財産について、国内財産と同水準のレベルで評価することは、実務上難しいことが多いため、課税上弊害がない範囲で、正確にやることについて見切りをつけることも必要と思われます。
想う相続税理士