相続税専門税理士の富山です。
今回は、非上場会社の株式の評価における純資産価額の計算の注意点について、お話します。
相続財産は買った値段で評価しない
財産評価基本通達・前文
相続税財産評価に関する基本通達
相続税及び贈与税の課税価格計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを下記のとおり定めたから、法令に別段の定めのあるもの及び別に通達するものを除き、昭和39年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産については、これにより取り扱われたい。
相続税の申告において相続財産を評価する場合には、上記の財産評価基本通達に従って計算する
これはどういうことかというと、1,000万円で買った土地Aは、1,000万円の財産として申告するのかというと、そうではなく、財産評価基本通達の規定に従って評価して申告する、ということ
土地A(固定資産税評価額:500万円・面積:200㎡)が路線価地域に所在して、路線価が4万円の場合には、
4万円×200㎡=800万円
が評価額となり、倍率地域に所在して、倍率表に定める倍率が1.1の場合には、
500万円×1.1=550万円
が評価額となる
つまり、買った値段で評価するのではない
生前に、評価額が800万円になる土地を1,000万円で購入した場合、手元の現預金が1,000万円減少し、土地が800万円増加する
トータルの財産としては、200万円減少する(相続税の課税対象を減らすことができる)
非上場株式の純資産価額の評価の注意点
上記の記事でお話したように、非上場株式を原則的評価方式により評価する場合、類似業種比準価額と純資産価額を混ぜ合わせて計算するが、この「純資産価額」は、ザックリ言うと、会社の財産から債務を差し引いて計算する
そうすると、上記と同じように、会社が1,000万円で評価額が800万円になる土地を購入すれば、純資産価額を計算する上での会社の財産を200万円減少させることができ、会社の株価を下げられるのかというと、購入した時期によっては、そうならない仕組みになっている
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
185 純資産価額
179《取引相場のない株式の評価の原則》の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2《評価差額に対する法人税額等に相当する金額》により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。
3年を経過していれば、800万円とか550万円という金額で財産計上することにより、会社の純資産を減少させることができるが、3年以内に購入した場合には、時価で評価することとなり、上記のような課税対象を減らす効果は余り期待できない
想う相続税理士