相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続により財産を取得した方が、療育手帳をお持ちの場合、相続税の申告の際に、障害者控除を受けることができるのか、ということについて、実際に私が調べた事例(秋田県の場合)を元に、お話します。
療育手帳とは?
秋田県療育手帳制度実施要綱(一部抜粋加工)
(交付対象者)
第2条 手帳は、児童相談所又は子ども・女性・障害者相談センターにおいて知的障害であると判定された者(以下「知的障害者」という。)に対して交付する。
療育手帳は、「児童相談所又は子ども・女性・障害者相談センターにおいて知的障害であると判定された者」に対して交付される、ということです。
子ども・女性・障害者相談センター
知的障害であると判定された者
秋田県の「子ども・女性・障害者相談センター」とは?
参考 子ども・女性・障害者相談センターについて秋田県秋田県HP(一部抜粋加工)
令和5年4月1日に、中央児童相談所、女性相談所、福祉相談センター、精神保健福祉センターの4つの相談機関が移転・統合し、「秋田県子ども・女性・障害者相談センター」として開所しました。福祉相談センター
身体障害者更生相談所
知的障害者更生相談所
知的障害者更生相談所
精神保健福祉センター
相続税関連法規における「障害者」の方の定義は?
相続税申告における障害者控除と特別障害者の要件とは?上記の記事にも書いたのですが、相続税法第19条の4で、「障害者」の方については「政令で定めるもの」をいうとし、その政令(相続税法施行令第4条の4)では、障害者の方については「所得税法施行令第10条第1項第1号から第5号まで及び第7号(障害者及び特別障害者の範囲)に掲げる者」等としています。
この中の「所得税法施行令第10条第1項第1号」は下記のとおりです。
(一部加工)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又は児童相談所、知的障害者更生相談所(知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第9条第6項(更生援護の実施者)に規定する知的障害者更生相談所をいう。次項第1号及び第31条の2第14号(障害者等の範囲)において同じ。)、精神保健福祉センター(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第6条第1項(精神保健福祉センター)に規定する精神保健福祉センターをいう。次項第1号において同じ。)若しくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者
上記のポイントとなる言葉と一致していますので、療育手帳をお持ちの方は、相続税法上の障害者として、障害者控除を受けることができる、ということになります。
療育手帳をお持ちの方は一般障害者?それとも特別障害者?
療育手帳をお持ちの方が、相続税法施行令に定める「一般障害者」「特別障害者」のどちらに該当するかにより、適用を受けることができる障害者控除額が変わります。
ここで、最初に見た「秋田県療育手帳制度実施要綱」をさらに読んでみます。
(一部加工)
(障害の程度)
第5条 障害の程度は、次の基準により重度とその他に区分するものとし、手帳には重度の場合は「A」と、その他の場合は「B」と表示するものとする。
(1) 重度
知能指数が35以下又は知能指数が50以下で身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)に基づく障害等級が1級、2級又は3級に該当するもので、かつ、日常生活における基本的動作に介助を必要とし、社会生活への適応が著しく困難であるものとする。
(2) その他
前号に該当する以外の程度のものとする。
「A」と表示されていると特別障害者、「B」と表示されていると一般障害者なのでしょうか?
ここで、過去の通達を見てみます。
出典:TAINS(S500621)
相個通 贈与税の特別障害者扶養信託制度における療育手帳の取扱いについて 昭和50年6月21日 直資2-149
(一部加工)
ところで厚生省は、精神薄弱者に対する各種の援助措置の充実を図るために療育手帳制度を別紙の厚生事務次官(昭48.9.27厚生省発児第156号、各都道府県知事、各指定都市市長宛)及び児童家庭局長通知(昭48.9.27.児発第725号、各都道府県知事、各指定都市市長宛)をもつて実施しておりますが、この手帳を交付するに当たつては、特別障害者扶養信託制度と同様、児童相談所、精神薄弱者更生相談所における判定結果に基づいております。また手帳の「判定記録」の「障害の程度」欄に「A」と表示されている者は相続税法施行規則第2条第1号イに規定する所得税法施行令第10条第2項第1号に掲げる特別障害者に該当します。
「A」と表示されていれば特別障害者、「B」と表示されていれば一般障害者、ということになります。
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