相続税専門税理士の富山です。
今回は、財産評価基本通達について、お話します。
具体的な決まりがあるから課税の公平が保たれる
相続後の売却金額をベースにマンションの相続税評価額を計算していいとされた事例上記の記事で、
財産評価基本通達は、法律ではないのですから、絶対それに従って評価しなければならない、というワケではありません。
今回ご紹介する裁決事例では、相続財産であるマンションについて、実際に売却した金額をベースに評価していい、という結論になりました。
とお話しました。
だからといって、自由に(自分勝手に)財産の評価をしていい、ということにはなりません。
なぜかというと、そんなことになったら、課税の公平性が確保できなくなってしまうからです。
想う相続税理士秘書
つまり、相続財産は原則として財産評価基本通達に従って評価額を計算すべきなのです。
個別的な特殊性のある財産の評価には適していない場合がある
とはいえ、原則として財産評価基本通達に従って計算すべきでも、「この場合には、財産評価基本通達に従って計算したらダメだよね(ちゃんと計算できないよね)」という「個別的な特殊性(特別性)」がある場合には、財産評価基本通達に従って計算された評価額ではなく、別の方法により計算した評価額でも容認され得る、ということになります。
想う相続税理士
出典:TAINS(F0-3-249)(一部抜粋)
平22-09-27裁決
ハ 本件マンションの固有の事情
(イ) 本件建物は、昭和56年5月に建築されたもので、耐震構造等が現行の建築関係法令に合致したものではない(平成20年9月27日付重要事項説明書)。
(ロ) 本件マンションは、2年ないし3年に1度、地下部分で排水口から水溢れが生じていた(平成20年9月27日付重要事項説明書)。本件建物は、外国人向けに造られた、いわゆる1LDKの間取りの建物であり、日本人にはマッチしない造りであって、土足仕様であることから特に床の傷みがひどかった(A不動産販売担当者の答述)。
(ハ) 本件売買契約前に本件マンションの購入を希望した者がおり、購入後に、本件建物を3LDKにリフォームすることを考えたものの、リフォーム費用が約1,500万円以上かかることが判明したことから購入を断念していた(A不動産販売担当者の答述)。
(ニ) 本件建物は、本件相続開始日前3年間程度、使用されることがなかった。
(ホ) 本件建物の附帯設備等には、経年変化等に伴う性能低下やキズ、汚れ等があり、本件買受人は、購入後480万円を負担して水回りを中心として床、壁等のリフォーム工事を行った(本件買受人の答述)。
財産評価基本通達に従わない適正な時価評価が必要
「別の方法により計算した評価額でも容認され得る」とお話しましたが、だからといって(財産評価基本通達に従って計算された評価額がオカシイからといって)、自由に(自分勝手に)財産の評価をしていい、ということにはなりません。
「財産評価基本通達は、法律ではない」とお話しましたが、財産評価に関する「法律」の記述はあります。
財産評価は、その記述には縛られます(従わなければなりません)。
(上記の記事でもお伝えしましたが)それは次の記述です。
相続税法(一部抜粋加工)
第22条 評価の原則
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
つまり「時価」である必要があるのです。
(財産評価基本通達とは)別の方法により評価したのであれば、「その評価額が時価である」ということを説明(疎明)できなければなりません。
想う相続税理士秘書
想う相続税理士
財産評価基本通達がなければ、毎回毎回1つ1つの財産について、それをやらなければなりません。
つまり、財産評価基本通達があることでラクになっているのです。