【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺言のとおりに遺産分けをすると問題がある場合にはどうすればいい?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、遺言と遺産分けについて、お話します。


遺産分割協議よりも遺言が優先される

民法(一部抜粋)
(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

上記の「遺言者」は、遺言を書いた方です。

つまり、亡くなった方です。

相続財産は、亡くなった方のご意思に従って(遺言に従って)分けることができる、と書かれています。

「財産をどう分けるか?」ということについては、遺言者のご意思が尊重されます。

遺産分割協議(相続人間の遺産分けの話し合い)をしても、遺言があれば、遺言の内容が優先されます。

受遺者(遺言で財産をもらう方)は、他の相続人が反対しても、必ず財産をもらうことができる、ということになります(遺留分の話はありますが、お金で解決でする話になります)

しかし、「できる」規定です。

「必ず遺言のとおりに遺産を分けなければならない」とは書かれていません。

相続人全員の合意があれば遺産分割協議が可能

民法(一部抜粋)
(遺産の分割の協議又は審判)
第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

今度は、一定の場合を除き、相続財産は遺産分割協議にしたがって分けることが「できる」、と書かれています。

さっきの規定も「できる」規定、こちらの規定も「できる」規定です。

じゃあ、どっちが「できる」のか?というと、こちらの場合は、「遺産分割協議」なので、相続人全員の合意がないと成立しません。

つまり、相続人全員(正確には、相続人以外の受遺者や遺言執行者等を含む)が遺言と異なる内容で遺産分割協議を行うことに同意しないと、こちらの規定は適用できません。

その同意がなければ、さっきの「遺言」で分けることになります(遺言は、相続人等全員の同意は不要ですから)。

遺言で遺産分けをするとうまくない場合もある

遺言者がいろいろとお考えになって遺言を作成されたとしても、相続人等全員が他の分け方の方がいい、と希望される場合もあります。

Aさんにとって、自分が財産を多くもらえる内容の遺言になっていたとしても、「今後の付き合いを考えたら、他の相続人にもっと財産を受け取ってもらって、恨まれないようにしたい」とお考えになる場合もあるでしょう。

Bさんがご自宅を相続する、という内容の遺言になっていたとしても、Cさんが相続した方が、相続税が大幅に安くなる、という場合もあるでしょう。

Dさんが土地をたくさん相続する、という内容の遺言になっていたとしても、「土地をこんなに相続したら相続税がたくさんかかる。でも、土地しか相続できなかったら、その多額の相続税が払えない」という場合もあるでしょう。

配偶者Eさんに財産を多く相続させたい、という遺言者の考えは分かるけど、そうすると、配偶者Eさんが亡くなった時に、相続税が多額になってしまう(その時大変)という場合もあるでしょう。

このような場合には、遺産分割協議による遺産分けを検討しましょう。

想う相続税理士

Aさんが、自分が全財産を相続できる内容の遺言だったけれども、納得して遺産分割協議による遺産分けを行うことにしたとします。

でも、遺産分割協議が始まったら、(本来は自分が全財産を相続できるところを譲歩したのに、それを考慮しないで)他の相続人が財産を要求してきたとします。

そのような場合には、Aさんは遺言で遺産分けを行うことを選択することができます。

Aさんが遺産分割協議の内容に同意しなければ、遺産分割協議は成立しないからです(相続人全員の同意が必要です)。

そうすると、最初のできる規定の「遺言に従って分けることができる」の話になるからです。