相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続財産の中に建築基準法に適合していない建物があった場合の、その評価方法について、お話します。
違法な建物を相続すると罰せられる?
建築基準法に適合していない、というと、悪いことをして(法律を無視して)建てられたモノだ、と考えられるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
例えば、相続税の申告で土地の評価をする場合、三大都市圏以外の地域にある1,000㎡以上の土地であれば、一定の要件を満たすと「地積規模の大きな宅地の評価」により、最低でも20%の評価減を適用することができます。
その要件の中に、「指定容積率が400%未満」というモノがあります(300%の場合も有)。
指定容積率は、都市計画図を確認したり役所調査をすることによって分かるのですが、前もって現地調査をしている場合、その指定容積率を確認した時に、「あれっ?あの土地に立っているあの建物ってこの容積率をオーバーしているんじゃない?」なんて思うことがあるかもしれません。
建築した時には、その時点の法律に適合した建物だったとしても、その建築後に法規制が変わり、現時点の法律には適合していない(違法になっている)という場合もあります。
容積率であれば、都市計画の見直しがあったような場合に、それが変更されている、ということが考えられます。
このような建物を「既存不適格建築物」と言います。
「既存不適格建築物」は、別に悪いことをして建てたワケではなく、後から法律の方が変わっただけですから、一般的には、いきなり使用不可になったりはしません。
それに対し、建った時から建築基準法に適合していない建物もあります。
このような建物を「建築基準法違反建築物」と言います。
このような建物に対しては、「除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置」(建築基準法第9条)をとることを命じられる可能性があります。
想う相続税理士秘書
建築基準法に適合していない建物を評価する決まりはある?
家屋は、「その家屋の固定資産税評価額に倍率(1.0)を乗じて評価」します。
これは、財産評価基本通達89「家屋の評価」に記載されていることですが、これ以上の記述はありません。
また、特別な家屋に対する評価としては、同通達には
91 建築中の家屋の評価
93 貸家の評価
94 借家権の評価
つまり、建築基準法に適合していない建物であったとしても、通常の建物と同じように評価(「固定資産税評価額×1.0」)する必要があります。
理論的には評価が安過ぎ・高過ぎになる場合がある?
「通常の建物と同じように評価する必要がある」とお話しましたが、通常と同じように評価することにより問題が生じる場合もあります。
「既存不適格建築物」の場合、他の建物よりも有利な状態で建っているのに、行政から強く文句を言われないワケですから、他の建物よりも価値がある、と税務署に判断される可能性があります。
逆に「建築基準法違反建築物」は、「違反を是正するために必要な措置」を取ることが強制されますので、相続することにより、その費用負担(コスト)が生じる可能性があるワケですから、その分の価値は下がる、と考えられます。
想う相続税理士