相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方が同じような不動産賃貸物件を複数所有していた場合に、小規模宅地等の特例が適用できる物件と、できない物件が出てくる、ということについて、お話します。
小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等に係る課税強化
相続税の申告においては、一定の「居住用」または「事業用」の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
想う相続税理士
評価額を減額できるのは、残された遺族にとっての生活基盤となり得る居住用や事業用の宅地等については、相続税の課税を軽減してあげよう、という趣旨によるモノです。
上記のような趣旨があるワケですから、相続税を安くするために駆け込みで賃貸物件を建築したような場合のその敷地等については、小規模宅地等の特例は適用できません。
下記の記事をご参照ください。
想う相続税理士秘書
事業的規模ではなく、かつ、複数の賃貸物件がある場合
上記の記事の内容をまとめると、
- 「相続開始前3年を超えて引き続き貸付事業の用に供されていた宅地等」は適用可(事業的規模かどうかは関係ない)
- 「相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等」は、ただそれだけじゃ適用不可(事業的規模であろうとなかろうと)だが、亡くなった方が「その宅地等とは別の宅地等で相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業(事業的規模)を行っていた」のであれば適用可
となります。
では、亡くなった方が事業的規模に該当しない貸付事業を営んでいて、かつ、その物件が複数あり、かつ、①「相続開始前3年を超えて引き続き貸付事業の用に供されていた」モノと、②「相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された」モノがある場合はどうなるでしょうか?
この場合、①は貸付事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例を適用することができますが、②は適用できない、ということになります。
適用できない宅地等は選択肢に入れちゃダメ
小規模宅地等の特例を適用する場合、適用できる土地が複数ある場合には、「各宅地等の単価」「各宅地等について適用できる面積」「二次相続への影響」等を考慮し、最も相続税が安くなるよう、適用する宅地等を選ぶのが一般的だと思います。
でも上記のように、貸付事業の用に供されていたとしても、そもそも適用できない宅地等が出てきますから、まずは適用の可能性があるかどうかをきちんと確認するところから始めましょう。
想う相続税理士
相続税の申告の際に小規模宅地等の特例を適用する場合には、選択可能な宅地等を取得したすべての相続人等の同意が必要となりますので、ご注意を。