相続税専門税理士の富山です。
今回は、イレギュラーなケースにおける小規模宅地等の特例の適用に関する注意点について、お話します。
節税効果は高いがデリケートで難しい小規模宅地等の特例
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
この特例の適用については「面積制限」があるため、適用を受けることができる土地を取得した方が複数いる場合(例えばAさんとBさん)、Aさんが適用を受けることにより、Bさんが適用できなくなったりします。
この場合、最終的にどの土地に適用するかについて、AさんとBさんが「同意」しないと、小規模宅地等の特例は適用できません。
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また、適用を受けることができる複数の土地(例えばイ土地とロ土地)を取得した方が一人だったとしても、イ土地に適用するか、ロ土地に適用するかで、相続税が大きく変わることがあります。
遺言により全財産を相続したが遺留分侵害額の請求を受けている場合
遺言により全財産を相続していれば、小規模宅地等の特例をどの土地に適用するかについて、他の相続人等の同意を得る必要はありません(自分一人で決められます)。
遺留分侵害額の請求を受けたとしても、それは変わりません。
その後、協議や調停等が成立したとしても、お金で解決しますので、土地はそのまま受遺者(遺言でもらった方)のモノです。
仮に、金銭の支払いに代えて、その特例適用宅地等を請求した相手に渡したとしても、それにより、その土地を相続しなかったことになるワケではなく、相続した後に自分のモノになった土地を渡した、というだけです。
申告期限までの所有継続要件等を満たせば、後で渡しても、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
逆に、金銭の支払いに代えて、その土地をもらった方は、その土地を相続で取得したワケではありませんので、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
相続税の申告期限において一部未分割の財産があった場合
相続税の申告期限までに、全部の財産の遺産分けが決まらなかった場合、当初申告で小規模宅地等の特例を適用することができるのは、分割された土地のみです。
その適用に関しては、特例の対象となり得る土地を取得した全ての方の同意が必要です。
同意が得られなかった場合、分割された土地については、原則として、その後の修正申告や更正の請求においても、小規模宅地等の特例は適用できません。
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