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相続税が発生せず相続開始年分の贈与に係る相続時精算課税選択届出書を提出する場合

相続税専門税理士の富山です。

今回は、
相続開始年分の贈与に係る相続時精算課税選択届出書の提出期限 の続きのお話です。


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相続税が出ない場合における相続開始年分の初めての相続時精算課税贈与

相続があった年に初めて相続時精算課税による贈与を受け、かつ、相続税が出ない、という場合、この相続時精算課税選択届出書の提出を失念してしまうリスクが高いです。

例えば、Aさんの全財産が3,000万円で、R6.1.1にそのうちの2,000万円をBさんに贈与したとします。

贈与後のAさんの財産は1,000万円で、AさんがR6.1.2にお亡くなりになったとします。

このR6.1.1の贈与について、相続時精算課税を適用すれば、2,000万円は「基礎控除額(110万円)+特別控除額(2,500万円)」の枠内なので、贈与税はかかりません。

そして、相続時精算課税贈与ということで相続税の課税対象に算入されるとしても、相続税の課税価格は、「1,000万円+1,890万円(=2,000万円△基礎控除額110万円)=2,890万円」ということになり、遺産に係る基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)以下ということになるため、相続税はかかりません。

このようになるためには、相続時精算課税選択届出書を提出期限までに提出する必要があります。

その提出期限はR6.11.2です。

「相続時精算課税選択届出書は翌年の2月1日から3月15日までに提出すればいいんだ」と勘違いして提出を忘れると、その2,000万円の贈与については、相続時精算課税が適用されません。

提出を忘れた場合は相続で財産を取得しているかどうかがポイントになる

BさんがAさんの相続で財産を取得していなかった場合、この2,000万円は(Bさんが相続で財産を取得していないため生前贈与加算の対象にならず、また、相続時精算課税による贈与にも該当しないため)、相続税の課税対象とはならず、贈与税の課税対象となります。

2,000万円に対する暦年課税による贈与の贈与税(特例税率)は5,855,000円です。

相続時精算課税を選択したり、相続で財産を取得していれば、相続税・贈与税ともにゼロだったのに、約590万円も余計に税金を払う羽目になります。

相続開始年分の相続時精算課税贈与に係る基礎控除の適用

ちなみに、相続開始年分の贈与について(相続時精算課税選択届出書は提出するものの)贈与税の申告書は提出しない場合でも、上記で計算したように110万円の基礎控除は適用できます。

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
11の2-5 贈与により取得した財産の価額が相続税の課税価格に加算される場合
2 相続開始の年に特定贈与者である被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産について法第28条第4項の規定により贈与税の申告を要しない場合において、令和6年1月1日以後に贈与により取得した当該財産につき相続税の課税価格に加算又は算入される金額は、当該財産の価額の合計額から法第21条の11の2(相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除)第1項(租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「措置法」という。)第70条の3の2第1項を含む。)の規定による控除(以下「相続時精算課税に係る基礎控除」という。)をした残額となることに留意する。

特定贈与者が亡くなった年に、その亡くなった方からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産については、相続税法第 28 条第4項の規定により贈与税の申告を要しない

しかし、当該財産の価額は贈与税の課税価格に算入され、当該贈与税の課税価格から相続時精算課税に係る基礎控除の額が控除される

そのため、特定贈与者が亡くなった年に、その亡くなった方からの贈与により取得した財産については、その財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除の額を控除した残額が相続税の課税価格に加算又は算入されることとなる

ということになります。

想う相続税理士

安易にスキームに飛びついて、安易に実行しないよう、ご注意を。