相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税を選択する場合の要件となる相続時精算課税選択届出書の提出について、お話します。
やむを得ない事情により届出書が提出できない場合もある
税法には「宥恕規定(ゆうじょきてい)」というモノがあります。
「宥恕」とは、「寛大な心で許してあげる」という意味です。
特例の適用を受けるためには、期限までに一定の手続きが必要だが、やむを得ない事情があったために、それができなかったという場合、それをもって特例の適用不可とはしない、ということを定めた規定です。
下記は、消費税のある届出書の提出に係る宥恕規定に関する通達です。
消費税法基本通達(一部抜粋)
1-4-16 「やむを得ない事情」の範囲
法第9条第9項《届出書の提出時期に係る特例》に規定する「やむを得ない事情」とは、次に掲げるところによる。
(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災又は火災その他の人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、法第9条第4項及び第5項《課税事業者の選択及び選択不適用》の届出書(以下1-4-16において「届出書」という。)の提出ができない状態になったと認められる場合
(2) (1)に規定する災害に準ずるような状況又は当該事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合
(3) その課税期間の末日前おおむね1月以内に相続があったことにより、当該相続に係る相続人が新たに法第9条第4項の届出書を提出できる個人事業者となった場合
この場合には、その課税期間の末日にやむを得ない事情がやんだものとして取り扱う。
(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合
やむを得ない事情により相続時精算課税選択届出書の提出を忘れてしまったら?
相続時精算課税を選択する場合には、相続時精算課税選択届出書を、選択をしようとする贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に提出しなければなりません(現行の取扱いとしては「贈与税の申告書に添付して」)。
もし、上記の消費税法基本通達の中にある「落雷」や「雪崩」があったため、相続時精算課税選択届出書が期限までに提出できなかった場合、それはやむを得ない事情なので、遅れて出しても大丈夫なのでしょうか?
相続時精算課税選択届出書の提出には、宥恕規定がありません。
つまり、期限に遅れたらアウトです。
相続時精算課税選択届出書の提出を忘れたらどうなる?
贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類です。
相続時精算課税選択届出書を期限内に提出することにより、相続時精算課税を選択することになり、相続時精算課税を選択しなければ、暦年課税になります。
相続時精算課税の特別控除額(2,500万円)を適用して贈与税をゼロにしようとしていた場合には、暦年課税の基礎控除額(110万円)を超える部分に贈与税が発生しますので、修正申告を余儀なくされることになります。
想う相続税理士