相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続人の中に「亡くなった方から生前に贈与を受けていたにもかかわらず、贈与税の申告をしておらず、さらに相続放棄をしている」という方がいらっしゃる場合に検討すべき点について、お話します。
贈与税の連帯納付義務に注意
贈与税は、財産をもらった方(受贈者)に納税義務があります。
ただし、財産を贈与した方(贈与者)には「連帯納付義務」があります。
簡単に言うと、受贈者が贈与税を払わなかった場合には、贈与者がその贈与税を払わなければならない、ということです。
亡くなった方の債務は債務控除の対象
連帯納付義務により贈与者がその贈与税を払わなければならない、そして、その贈与者が亡くなっている、ということになると、相続開始の時点において、その亡くなった方に債務がある、ということになります。
その納税義務は、相続人に承継されます。
この場合、その受贈者である相続人が相続放棄をしていれば、他の相続人がその納税義務を承継することになります。
亡くなった方の債務は、「債務控除」と言って相続税の申告においてプラスの財産からマイナスすることができます。
債務控除の要件
債務控除については、「亡くなった方の債務で、相続開始の際現に存するモノであり、確実と認められるものに限る」とされています。
債務控除の対象とするのであれば、この「現に存するモノ」「確実と認められる」かどうかの判断をする必要があります。
今回、仮に他の相続人が代わりに贈与税を払ったとしても、本来は受贈者である相続人が払うべきモノですので、その方に払った分を請求することができます。
払ってもらえれば、立て替えたような感じです。
そうではなく、その受贈者が(昔はたくさんお金があったけれども)相続開始時点では贈与税を納められないような状況にあり、他の相続人がいったん代わりに納税して「立て替えたから払え」と言ってお金を請求しても、払ってもらえない、お金を回収できないという状況の場合に、債務控除の可能性が出てきます。
まずは受贈者が贈与の申告をすべき
贈与があったにもかかわらず、贈与税の申告をしていないのであれば、期限後申告になってしまいますが、贈与税の申告をすべきです。
本当にそれは贈与なの?
贈与に見えても、贈与にならないこともあります。
贈与は、贈与者の「あげますよ」という意思表示と、受贈者の「もらいましたと」いう認識が必要です。
受贈者が勝手にお金を引き出していたりして贈与が成立していないような場合には、そのお金は贈与税の課税対象とならず、相続税の課税対象(「貸付金」や「預け金」)になる可能性があります。
この場合には、その財産を生前に受け取った方は、受け取る権利がない、ということになります。
なぜなら、相続放棄をしているからです。
理論上は、他の相続人に、その受け取った財産を渡さなければならない、ということになります。
そうなると、贈与税も発生せず、債務控除の話も出てきません。
想う相続税理士