相続税専門税理士の富山です。
今回は、下記の前回の記事の続編として、相続税の申告をご自分でやれるかどうかの「難易度」の具体的な判断基準について、お話します。
相続税の申告に税理士は必要?(基本編)相続人の人数が増えるとあなたのリスクが増える
相続人があなた1人であれば、相続税申告の難易度はその点では低くなります。
相続税の金額は遺産分けにより変わるため、相続税の申告において「遺産分け」は重要なポイントになるのですが、相続人が1人であれば、その遺産分けをする必要がないからです。
ただし、相続人があなた1人であったとしても、遺言により財産を取得する方が他にいる場合には、その方と共同で相続税の申告書を作成することになりますので、難易度が低くなるとは言えません。
相続税は、遺産の総額に対して、ベースとなる税額を計算する仕組みになっているため、個々の財産取得者がどれだけ財産を取得するか(したか)ということが把握できないと、正しい計算・申告ができないようになっています。
後で修正申告等により誰か1人が取得した財産の評価額が変わっただけで、他の財産取得者の相続税も変わるケースがほとんどです。
相続人が複数いる場合で、あなたが代表して相続税の申告書を作成した場合、その他の財産取得者から、「自分はちゃんと相続財産を申告しているのに、何で追加の税金を払わなくちゃならないの?おかしいでしょ。私は払わないわよ。そんなに言うのならあなたが払いなさいよ。」なんて言われてしまうリスクもあります。
この理屈を説明するのは骨が折れます。
財産の評価ではなく、申告内容に間違いがあった場合には、もっと責められるでしょう。
税理士に依頼した方が絶対にいいです。
相続財産の金額が大きいと発生する地雷が増える
相続財産の金額が大きいと、評価すべき財産の種類が増えることが一般的です。
仮に相続財産が預金だけだったとしても、その預金の生前の動きなどを確認する必要があり、そこから新たな財産が発見されることもあります。
預金が多ければ、お金をいろいろなことに使っている可能性も高くなります(他の財産に形を変えていることも考えられます)。
財産の金額が多いと、それだけ検討すべき論点が増えます。
当然難易度は高くなります。
相続税申告に関する税理士報酬に総額基準が採用されているのは、このためです。
土地は相続税申告の難易度を高める最大の要因
財産の金額があまり多くなくても、相続財産の中に土地がある場合には難易度が高くなります。
そして、その土地の数が増えれば増えるほど、幾何級数的に難易度が高くなります。
同じ土地は一つとしてありません。
たとえ形が同じ土地があったとしても、接道や所在地域その他の周辺環境等によって、土地の評価額や評価方法が全く異なることもあります。
また、土地の評価には様々な評価減の方法があるため、それらを知らずに評価することにより、過大に相続税を納めることになるリスクもあります。
また、土地の評価自体が正しくできたとしても、また別の難関が待ち受けています。
それが、「小規模宅地等の特例」です。
相続財産の中に土地や借地権などがある場合、一定の要件に該当すれば、土地を安く評価することができます。
亡くなった方が住んでいたご自宅の敷地について適用できるパターンもあり、その場合には、330㎡まで8割引きで評価することができます。
この小規模宅地等の特例は、適用を受けるための要件が複雑なため、難易度が飛躍的に高くなります。
また、適用できる小規模宅地の特例に気付かず、その適用をせずに相続税の申告をした場合、後から気付いて適用するのは認められないため、一発勝負的な面もあります。
生前にお金が親族に動いていると税務署対応の難易度が高くなる
相続が発生した場合、税務署は亡くなった方の生前の預貯金の動きを精査します。
生前に無申告の贈与があったり、贈与が成立していないお金の動きなどがあると、マークされます。
亡くなった時点での財産が少なくても、「相続についてのお尋ね」が送られてきたり、相続税の申告をしても税務調査になったり、電話がかかってきたりします。
この場合、税務署に対する対応の難易度がかなり高まります。
税務署は、「こういうケースに該当すれば課税する」という確固たる考えを持っています。
それに対して、税務上の概念や考え方を理解せずに、素人的な回答をしてしまうと、大変危険です。
「税務署の職員が言っている意味が分からない」のは、大きなリスクです。
税理士に依頼すれば、税理士が代わりに対応します。
想う相続税理士