相続財産探しはどうやってやればいい?
想う相続税理士
あるか
分からない
財産を
探す
一人暮らしの方がお亡くなりになった場合、「どんな相続財産があるのか?」、そしてそれが「どこにあるのか?」が分からない、ということがよくあります。
居間や寝室、いつもいらっしゃったお部屋、大事なものを保管していたと思われる場所などから、書類などを探し出し、財産の見当をつけていくことになりますよね。
でも、「本当にそれだけなのか?」、つまり、「それ以外に財産がないか?」って心配になっちゃいますよね?
またこれは、一人暮らしの方だけのお話ではなく、同居されていた場合だったとしても、相続人の方が、財産について話し合う、そういうコミュニケーションを生前にきちんととっていたり、会話の内容や、身の回りの物から、大体こういった財産があるみたいだな、ということを予想しておかなければ、その難しさは同じです。
まずは
郵便局から
を疑う
どんな財産があるのか目星がつかないとはいえ、比較的多くの方がお持ちの可能性がある財産として、郵便局の貯金や保険があります。
これらについては、当然ながら、税務署のチェックも想定されますので、事前に、ゆうちょ銀行に財産があるかどうかの確認をすることをオススメします。
ゆうちょ銀行の貯金や保険の有無を確認する場合、そのお亡くなりになった方のものだけではなく、相続人などの親族の方の名義になっているものについても確認しましょう。
名義が親族になっていたとしても、贈与の実態がないと、それはお亡くなりになった方の財産ということになります。
親族の名義を借りた、いわゆる「名義預金」・「名義保険」と言われるものです。
相続税の申告書が提出されれば、こういった側面についても、税務署のチェックが予想されます。
遺言の
有無の確認
も重要
遺産分けについては、相続人間で話し合い、遺産分割協議書を作成して行う、というパターンが多いです。
でも、その話し合いをする前に、「遺言があるかどうか」を確認する必要があります。
遺言は、遺産分割協議に優先するからです。
遺言には、財産の目録(明細)が記載されている可能性があります。
お亡くなりになった方のタンスや机など、大事なものが保管されていそうな場所を重点的に探しましょう。
見つから
なくても
再発行
できる遺言
もし、見つからなかったとしても、どこかに公正証書遺言が残っている可能性があります。
公正証書遺言は、公証役場で作成しているため、公証役場に行けば、公正証書遺言があるかどうかの確認をすることができます。
また、原本が保管されていますので、その謄本を取得することができます。
書いた
ことだけは
分かる遺言
また、あまり知られてはいませんが、「秘密証書遺言」というものがあります。
これは、公正証書遺言とは違い、その遺言の内容を知られることなく、つまり公証人でさえその内容を見ることなく、「その(秘密証書)遺言があったということだけを公証人に証明してもらう遺言」です。
先ほど、「公証人でさえその内容を見ることなく」と言いました。
つまり、「公証人のチェックが入っていない」ということですので、秘密証書遺言は、その遺言が、遺言としての形式要件を満たしてるかどうか分からない、そういうリスクを伴っている、ということになります。
過去の
贈与財産も
確認する
また、財産を確認するといっても、今現在ある財産を確認するだけでは、相続税の申告においては十分ではありません。
相続税の申告では、過去の贈与を相続税の申告に織り交ぜなくてはいけない(相続財産に加算しなければならない)場合があるのです。
その1つ目は、「財産を相続される方」が、その相続開始前3年以内に、そのお亡くなりになった方からもらった贈与財産です。
ちなみに、その贈与を受けた時に、贈与税の申告をして、贈与税を払っている場合には、今回相続で相続税がかかってしまう訳ですから、贈与税と相続税の二重課税が生じてしまうことになります。
そこで、その贈与税については、相続税の計算上、相続税から控除して、二重課税を排除するという仕組みになっています。
もう1つは、相続時精算課税制度を適用した贈与財産です。
これについては、その相続人が「財産を相続しなくても」、加算の対象となります。
また、相続人以外の孫も、この相続時精算課税制度を適用した贈与ができるようになっていますので、注意が必要です。
これらの贈与については、その当事者(「財産をあげた人=お亡くなりになった方」と「もらった人」)がその贈与のやりとりを認識しているというのがその前提になります。
「贈与」というのは、あげた人ともらった人双方のその「贈与」と「受贈」の意思があって、初めて成り立つものだからです。
ですから、もらった人が「分からない」ということは基本的にあり得ません。
この、贈与財産がきちんと把握できないと、相続税の計算は正しくできません。
税務署から
教えて
もらえる
過去の贈与
「じゃあ、ちゃんと聞かなくちゃ」ということで、相続人や親族に、財産を贈与されたか聞いてみたけど、はっきり教えてくれない、という場合、申告に支障をきたしてしまいます。
この場合、「贈与税の申告内容の開示請求」という手続きを税務署にすることができます。
これにより、税務署に申告した贈与の「課税価格」を教えてもらうことができ、その贈与財産の金額を、相続財産に加算して計算することができます。
ただし、贈与税の非課税枠である110万円以下で贈与している場合など、贈与税の申告をしていない贈与については、税務署でも把握していないので、この手続きをしても分かりません(当然ですよね)。
銀行の
貸金庫も
確認する
銀行の貸金庫に財産が預け入れられている場合があります。
税務調査においても、調査官が、貸金庫の有無を確認したり、その貸金庫の中を確認することがあります。
相続人全員の同意があれば、その貸金庫の中身を確認することができます。
もし、相続人全員の同意が得られないような場合には、公証人に依頼することによって、その貸金庫の中を確認し、その中に何が入っていたかを公正証書にまとめてもらうことができます。
これは、相続人全員の同意が得られなかったことにより、その貸金庫の中身を確認できない場合にも当然有効なのですが、実は税務調査対策としても有効な面があります。
公証人がその中身について証明してくれたことになるからです。
税務署に対する金庫の中にあった財産の証明書としての役割を果たしてくれます。
また、他の相続人がその貸金庫の中から財産を抜いたりすることを防ぐ効果もあります。
一定の株式
は一元管理
されている
そのお亡くなりになった方が、株式を保有しているかどうか、どこの証券会社で株を買っているか分からないという場合に、その証券会社等を特定する方法があります。
相続人であれば、証券保管振替機構というところに、「登録済加入者情報の開示請求」という手続きを取ることができます。
ただし、この開示される情報は、その口座が開設されている証券会社等の情報だけですので、「どんな株をどれだけ持っているのか」は、その開示された情報ではわかりません。
その情報をもとにして、その口座が開設されている証券会社等に対して、残高証明書を請求する必要がある、ということです。
この場合でも、特定口座の残高証明書の株数には、単元未満株式(端株)の株数は記載されません。
その証券会社等では分からないのです。
この場合、配当金の支払通知書に記載されている信託銀行などの株主名簿管理人に、端株の有無を確認する必要があります。
また、この手続きでも、非上場の投資信託受益権、外国株式、国債、社債等などについては、その有無が確認できませんので、ご注意ください。
ですから、金融機関から届いている取引報告書がないかどうか、そして、銀行口座での入出金で、金融資産絡みのものがないか、などを確認することがやはり重要です。
団体信用生命保険で相続税が出る?
想う相続税理士
家を買うと
みんな
ほとんど
入る
生命保険
「団体信用生命保険って何?」という方もいらっしゃるかもしれません。
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組むときに加入する生命保険です。
住宅ローンの借り入れをした方がお亡くなりになったり、高度障害状態になられたときに、その住宅ローンを返済するための保険金です。
短縮して「団信」と呼ばれます。
団信は
普通の
生命保険
ではない
住宅ローンの借入をされた方がお亡くなりになると、その団信の保険金は、銀行に支払われ、住宅ローンの返済に充当されることにより、その住宅ローンはなくなります。
相続人の方に生命保険金が振り込まれ、相続人の方がそれを元手に銀行にお金を振り込んで、住宅ローンを返済する訳ではありません。
団信により
住宅ローン
はなくなる
先ほど、「住宅ローンの借り入れをされた方がお亡くなりになったことにより団信は直接銀行に支払われ住宅ローンはなくなる」と言いました。
これは、相続税の計算にどう影響するでしょうか?
相続税の計算においては、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて(この差し引くことを「債務控除」といいます)、正味の財産の金額を計算します。
住宅ローンは、このマイナスの財産に当たります。
しかし、団信によって住宅ローンは返済されてなくなってしまうので、プラスの財産から控除することはできなくなります。
「大きな自宅があっても、同じように多額の住宅ローンもあるから相殺されて相続税はかからない」という感覚があったら要注意です。
団信により住宅ローンだけがなくなり、自宅に対してダイレクトに相続税がかかることになります。
団信の
生命保険金
には
非課税金額
の適用は
ない
通常、生命保険金が下りると、「500万円×法定相続人の数」で計算される金額が生命保険金だけに適用できる非課税枠として認められているため、生命保険金が下りても相続税がかかりにくくなっています。
しかし、この団信は相続人が取得するものではなく、あくまでも銀行が取得するものであるため、そもそも相続税の課税対象にならず、非課税枠の適用もないのです。
相続人が
生命保険金
を取得して
相続後に
銀行に
住宅
ローンを
返済したら
どうなる?
団信ではなく、通常の生命保険金を相続人が取得して住宅ローンを返済した場合、お金の流れとしては「保険金が下りて住宅ローンの返済に充てられる」ということですから、団信と同じです。
しかし、相続時点において存在していた住宅ローンについては、「債務控除」としてプラスの財産からマイナスでき、その上で相続人が取得した生命保険金については、非課税枠の適用があります。
「生命保険をもらって現金プラス、借入金を返済して現金マイナス、トータル現金の残高はプラマイゼロ」なのに、「生命保険は課税の対象外で、住宅ローンは債務控除できる」という大きな節税効果を生み出します。
具体的な例を挙げると、生命保険金を取得して相続人が3人の場合、500万円×3人=1,500万円の非課税枠が適用できます。
自宅が5,000万円、住宅ローンが1,500万円とすると、団信に加入している場合には、1,500万円の住宅ローンが団信により消滅し、自宅の5,000万に対して相続税が課税されます。
それに対して通常の生命保険金の場合には、自宅の5,000万円から住宅ローンの1,500万円を債務控除し、この時点で差し引き3,500万円、これに受取った生命保険金1,500円を加算する必要があるかというと、この生命保険金については1,500万円がまるまる非課税枠に収まるので相続税の課税対象とならず、差し引き3,500万円のままです。
相続人3人の場合の相続税の基礎控除額(非課税枠)は4,800万円ですから、3,500万円であれば、相続税はかかりません。
しかし団信の場合には5,000万円ですから、非課税枠の4,800万円を超えてしまいます。
想う相続税理士