相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模宅地等の特例の「家なき子特例」について、お話します。
持ち家に住んでいない=家なき子
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
この特例の適用パターンの中に「家なき子特例」と呼ばれているモノがあります。
「家なき子」と言うのは、ザックリ言うと「賃貸物件にお住まい」という意味なのですが、この「家なき子」の方が、亡くなった方のご自宅の敷地を相続した場合、一定の要件に該当すれば、そのご自宅の敷地のうち330㎡までの部分について、その評価額を80%減額することができます。
配偶者がいる場合には適用不可
この「家なき子特例」は、そのご自宅の敷地を取得した親族が、
- 相続開始前3年以内に自分や自分に近い親族、法人が所有する国内にある家屋に居住していない
- 相続開始時に居住している家屋を過去において所有していない
- 相続税の申告期限までその敷地の所有を継続する
- 「配偶者」がいない
- 「法定相続人である同居親族」がいない
つまり、一次相続(ご夫婦のうち先に片方の方が亡くなった場合)においては、「家なき子特例」は適用不可、ということになります。
数次相続があった場合
一次相続が発生し、その相続に係る遺産分けを相続人間でする前に、二次相続(ご夫婦のうちもう片方の方が亡くなること)が発生した状況を「数次相続」と言います。
このような場合、お二人分の遺産分けを同時にするのではなく、一次相続・二次相続の順に遺産分けを行います。
そして、一次相続の遺産分けの内容が、二次相続の相続税にダイレクトに影響します。
例えば、「旦那さん(一次相続)→奥様(二次相続)」の順に亡くなったケースで一次相続の遺産分けを考える場合、先ほどもお話したとおり、旦那さんが亡くなった時点では奥様がいらっしゃいますので、一次相続では「家なき子特例」が使えません。
使えないのですが、奥様の元々の財産が多いと、奥様が一次相続の遺産分けで多くの財産を相続することにより、二次相続の相続税が高くなると考え、特例が使えなくても「家なき子」の方がご自宅の敷地を相続するという選択肢を選ぶことがあるかもしれません。
しかし、この場合、そのご自宅の敷地を奥様が相続すれば、配偶者の税額軽減(1億6,000万円分まで無税)の恩恵を受けられる上に、無条件で小規模宅地等の特例を適用することができます(配偶者がご自宅の敷地を相続した場合には「所有継続要件」や「居住継続要件」が課せられていません)。
したがって、奥様がご自宅の敷地を相続しても、税負担はかなり軽くなります。
さらに二次相続の遺産分けを考えると、この時には「配偶者」がいません(旦那さんが先に亡くなっている)ので、「法定相続人である同居親族」がいなければ、「家なき子」の方がここ(二次相続)でご自宅の敷地を相続すれば、家なき子特例を適用できます(他の要件を満たしていることが前提)。
この適用により、二次相続の税負担も軽くなります。
結果的に、一次相続・二次相続トータルでも、税負担を抑えられる可能性があります。
想う相続税理士
実際の状況を考慮して、いろいろとシミュレーションをしてみましょう。