【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

令和6年以後に2人以上から相続時精算課税贈与を受ける場合の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、今年(令和6年)以後に複数の方から相続時精算課税により贈与を受ける場合の注意点について、お話します。


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令和6年分以後は相続時精算課税贈与に基礎控除額が創設された

相続税法基本通達(一部抜粋)
21の11の2-1 相続時精算課税に係る基礎控除の額
相続時精算課税に係る基礎控除の額は、各年分において、相続時精算課税適用者ごとに110万円であることに留意する。
(注)1 同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の相続時精算課税に係る基礎控除の額は、特定贈与者ごとに21の11の2-2の定めにより計算した金額となることに留意する。

相続時精算課税による贈与には、2,500万円の特別控除額がありますが、令和6年分以後の贈与からは、この特別控除額を適用する前に、110万円の基礎控除額を適用することができるようになりました。

この基礎控除額110万円部分の贈与については、贈与税もかからず、相続税もかかりません。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

特別控除額2,500万円部分の贈与については、贈与税はかかりませんが、相続税はかかります。

2人以上から相続時精算課税贈与を受ける場合の基礎控除額の適用は?

相続税法基本通達(一部抜粋)
21の11の2-2 特定贈与者が2人以上ある場合における相続時精算課税に係る基礎控除の額
相続時精算課税適用者が同一年中において2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合における特定贈与者ごとの贈与税の課税価格から控除される相続時精算課税に係る基礎控除の額の計算を算式で示せば、次のとおりである。

110万円×特定贈与者ごとの贈与税の課税価格/特定贈与者ごとの贈与税の課税価格の合計額

(注)1 上記の算式により計算した特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除の額に1円未満の端数がある場合には、特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除の額の合計額が110万円になるようにその端数を調整して差し支えない。
2 上記算式中の「特定贈与者」には、贈与をした年の中途において死亡した特定贈与者も含まれることに留意する。

例えば、長男が令和6年中に父から600万円、母から400万円、それぞれ贈与により財産を取得し、その両方の贈与について、相続時精算課税制度を適用する場合、父からの贈与につき基礎控除額110万円、母からの贈与につき基礎控除額110万円を適用できるワケではありません。

もらった人(長男)1人につき年間110万円です。

この110万円を、父からの贈与と母からの贈与の「贈与額(贈与税の課税価格)の比(6:4)」で按分します。

したがって、父からの贈与については66万円、母からの贈与については44万円の基礎控除額を適用します。

生命保険金の非課税枠(非課税限度額)を適用する場合と同じです。

(後々の相続税の計算において有利だからといって)110万円を全額父からの贈与に適用したい、というようなことはできません。

想う相続税理士秘書

贈与税の課税価格に異動があった場合はどうなる?

相続税法基本通達(一部抜粋)
21の11の2-3 特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る贈与税の課税価格に異動があった場合
相続時精算課税適用者が同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得している場合において、当該贈与に係るその年分の贈与税の申告書の提出期限の経過後に、当該年分の贈与税の課税価格に異動が生じたときにおける特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除の額は、当該異動後の贈与税の課税価格を基礎として計算した金額となることに留意する。

上記でお話したとおり、2人以上から相続時精算課税贈与を受けた場合、基礎控除額は「贈与額(贈与税の課税価格)の比」で按分します。

その後において、贈与額(贈与税の課税価格)に異動(変動)があった場合には、当然、基礎控除額の按分計算も変わるため、基礎控除額を控除した後に適用していた特別控除額の適用金額も変わるモノと思われます。

贈与税の修正申告や更正の請求、更正をしなければならないか(できるか、あるか)については、時効期間との兼ね合いになるモノと思われます。

想う相続税理士

ただし、特別控除額の適用金額については、時効とは関係なく、異動後の贈与税の課税価格を元に計算した基礎控除額を勘案した上での金額となり、その金額が相続税の課税価格に加算されることになるハズです。