相続税専門税理士の富山です。
今回は、「配偶者の税額軽減」の適用の注意点について、お話します。
配偶者は相続税が安くなる
配偶者は、亡くなった方と一緒に人生を歩んでこられた方です。
夫婦は一心同体です。
その亡くなった方の財産形成の最大の貢献者です。
ですから、相続税の計算では、配偶者には大きな非課税枠が設けられています。
No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)(一部抜粋)
次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
想う相続税理士秘書
つまり、配偶者が財産を相続すればするほど、全体の相続税が安くなります。
全体の財産が1億6,000万円以下の場合、その全財産を配偶者が相続すれば、その全体の財産に対して「配偶者の税額軽減」を適用できるため、相続税はゼロとなります。
「配偶者の税額軽減」の適用を受けることによるリスク
上記を見ると、「配偶者の税額軽減」は非常にいい制度のように見えるかもしれませんが、その適用を受けた後のことも考える必要があります。
「配偶者の税額軽減」の適用を受けるということは、それだけ配偶者が財産を相続したということになります。
そうすると、その配偶者が亡くなった時には、それだけ相続税がかかりやすくなる、ということになります(最初の相続に比べて、配偶者が亡くなった時の相続は、通常、法定相続人が1人減ることになるため、それだけでも相続税がかかりやすくなっているのに)。
そこで、「配偶者の税額軽減」の適用を受ける場合には、その配偶者が亡くなった時の相続(二次相続)も見据えた上で、適用を検討する(遺産分けを考える)必要があります。
税金最優先でいいのか?
上記の二次相続の相続税まで検討した結果、今回の相続では配偶者が財産を相続しない方がいい、という結論に達したとします。
しかし、本当にそれでいいのか?というのは、相続人間でよく考えていただく必要があると思います。
二次相続まで含めた上で相続税が一番安くなるからといって、配偶者が財産を取得できない、というのは、違和感を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
最初にお話したように、配偶者は亡くなった方の財産を一緒に築き上げた、財産形成の最大の貢献者です。
当然、財産をもらってもいいはずです(税制がそれを後押ししています)。
財産を相続するということは、そこで故人と繋がりを感じる、という意味合いもあると思います。
そして、配偶者にもこれからの生活があります。
その配偶者が亡くなった時の相続人の税負担にも留意する必要はありますが、上記のようなことも考慮して、遺産分けを進める必要があるのではないでしょうか?
想う相続税理士