【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺留分減殺請求が遺留分侵害額の請求に変わると増税になる?

ホームズ!遺留分については、お金で解決できるようになったから良かったと思っていたが、民法改正により、従来のように相続財産を遺留分請求者に渡すと新たに所得税が課税されてしまうんだね!
ワトスン君、君も知ってのとおり、民法改正前は、遺留分減殺請求により財産が共有になると、分け合うために財産を売ってお金に変えようとしても誰かが反対したらそれもできなかったり、大事な同族会社の株式も共有になってしまう、なんてことがあった。民法改正により、そのような事態を避けることが可能になったものの、代わりにお金をちゃんと用意しなくちゃならなくなったからねえ。そのお金が用意できずに財産で渡すとなれば「代物弁済」になるから、譲渡所得の対象になってしまうのさ。

相続税専門税理士の富山です。

今回は、民法改正により、従来の「遺留分減殺請求」「遺留分侵害額の請求」に変わったことによる、課税への影響について、お話します。


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遺留分減殺請求とは?

遺産分けにおいては、相続人間で協議する遺産分割協議よりも、遺言が優先します。

だからといって、遺言があれば、100%遺言のとおりになるかというと、そうではなく、各相続人には「遺留分」という「最低限の財産の取り分」が保障されています。

ですから、遺言によりこの「遺留分」相当の財産がもらえなかった相続人は、民法改正前においては、「遺留分減殺請求」をすることにより、財産を請求することができたのです。

遺留分減殺請求により、「遺贈」(遺言により財産を渡すこと)や「贈与」(贈与も遺留分の計算対象となり得ます)は、遺留分を侵害している部分を限度として無効になります。

無効になることにより、その遺贈・贈与された財産は、受遺者(遺言により財産をもらった方)や受贈者(贈与により財産をもらった方)と相続人の間における「共有財産」となります。

共有になった後、その遺留分相当の相続財産を、遺留分請求者に渡すのは、「遺産分けの一環であり、譲渡ではない」という取扱いになっていました。

遺留分侵害額の請求とは?

民法改正後の「遺留分侵害額の請求」は、財産の請求ではなく、金銭の支払請求です。

つまり、「最低限の財産の取り分」が金銭債権化されたのです。

しかし、金銭債権化されたといっても、例えば、遺言でもらった財産が土地だけだったら、お金で払えません。

自前の預貯金で払ってもいいのですが、それもない場合、遺言でもらった土地を渡すしかありません。

この場合、本来、お金で渡すところをモノ(土地)で渡しています。

税務的には、モノ(土地)を売ってお金に換えて、そのお金を渡しているのと同じです。

ですから、この「モノを売る」ことが「譲渡所得」(この場合は土地の売却)に該当するため、所得税の課税対象となります。

所得税基本通達
3-1の6 遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転
民法第1046条第1項《遺留分侵害額の請求》の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の基因となった遺贈又は贈与により取得したものを含む。)の移転があったときは、その履行をした者は、原則として、その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる
(注) 当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求をした者が取得した資産の取得費については、38-7の2参照

想う相続税理士

財産を分けっこしただけのつもりでも、所得税の課税が発生する場合がありますので、ご注意を。