相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続人の中に行方不明の方がいらっしゃる場合の遺産分割協議について、お話します。
遺産分割協議は相続人全員の合意がないと成立しない
相続があった場合、その亡くなった方の財産は、相続人全員の共有状態になります。
遺言があれば、遺言に従って遺産分けをすることができます(共有状態が解消されます)。
その遺言の内容が遺留分(相続人の方に法律上認められる最低限の取り分)を侵害している(その最低限の取り分をもらえない内容になっている)場合には、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。
遺言がなければ、代わりに「遺産分割協議書」を作成して、それに従って遺産分けをします。
この遺産分割協議書には、通常、相続人全員の実印を押印します。
誰か1人でも判子を押さなければ、遺産分割協議は成立しません。
モメているために実印が揃わない、という場合もありますが、行方不明で連絡が取れないので実印が揃わない、という場合もあります。
行方不明だったらその人を除いて遺産分割協議をしてもOK、なんていう取扱いはありません。
昔住んでいた住所や最近会った人からの情報等を元に、その人を探すことになります。
どれだけ探しても見つからない場合、もう遺産分けはあきらめるしかないのでしょうか?
家庭裁判所にピンチヒッターを選んでもらう
行方不明なら、代わりに誰かに遺産分割協議に加わってもらいます。
それが、「不在者財産管理人」です。
裁判所HP
不在者財産管理人選任(一部抜粋加工)
従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に、家庭裁判所は、申立てにより、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、財産管理人選任等の処分を行うことができます。
このようにして選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理、保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割、不動産の売却等を行うことができます。
上記にあるとおり、この財産管理人は、財産の管理等することができるのですが、さらに「権限外行為許可」を得ることで、遺産分割(協議)を行うことができるようになります。
裁判所HP
不在者財産管理人選任(一部抜粋加工)
Q4. 財産管理人が、不在者に代わって遺産分割協議をする場合や、不在者の財産を処分する必要がある場合、どのような手続が必要になるのですか。
A 「権限外行為許可」という手続が必要となります。財産管理人は、民法103条に定められた権限を持っていますが、それは主に財産を保存することです。遺産分割協議をしたり、不在者の財産を処分する行為は、財産管理人の権限を超えていますので、このような行為が必要な場合は、別に家庭裁判所の許可が必要となります。
遺産分割協議が終わった後もピンチヒッターはそのまま継続する!
遺産分割協議が無事に終わった後、財産管理人の方に対して「お疲れさまでした。今回はありがとうございました。後はこちらでうまくやります。」というのは通用しません。
その行方不明の方の相続財産(及び元から持っていた財産)は、その財産管理人がそのまま管理します。
相続の後に、親族で勝手に分けっこする、なんていうことはできません。
裁判所HP
不在者財産管理人選任(一部抜粋加工)
Q6. 財産管理人の職務は、いつまで続くことになるのですか。
A 不在者が現れたとき、不在者について失踪宣告がされたとき、不在者が死亡したことが確認されたとき、不在者の財産がなくなったとき等まで、財産管理人の職務は続くことになります。申立てのきっかけとなった当初の目的(例えば、遺産分割など)を果たしたら終わりというものではありません。
不在者が現れたときには不在者であった者に、不在者について失踪宣告がされたり不在者が死亡したときは不在者の相続人に、それぞれ財産を引き継ぐことになります。
想う相続税理士