相続税専門税理士の富山です。
今回は、贈与に係る受贈者が未成年者である場合の税務上の取扱いと注意点について、お話します。
「子どもや孫に早く財産を渡したい」その前に確認すべきこと
お子さんやお孫さんの将来を考えて、早めに財産を渡すことを検討される方は多いかと思います。
特に、相続時精算課税制度を使えば、110万円の基礎控除額の他に2,500万円の特別控除額があるため、早期の資産移転にはとても便利な制度に見えます。
しかし、贈与を受ける側が未成年者である場合、この制度にはいくつかの重要な制限や注意点があります。
今回は、未成年者への贈与における相続時精算課税制度の適用可否と実務上のポイントを解説します。
未成年者でも制度は使える?受贈者の要件を確認
まず、相続時精算課税制度を利用するためには、贈与者(特定贈与者)が60歳以上の親や祖父母などであること、そして受贈者が18歳以上の直系卑属(子や孫など)であることが基本条件となっています。
つまり、受贈者が18歳未満である場合には、この制度は適用できません。
仮に15歳の子どもにお金を贈与したとしても、相続時精算課税制度の選択はできず、暦年課税制度での贈与扱いとなります。
また、18歳以上であっても、その年の1月1日時点で18歳に達していなければ、制度の要件を満たさない点にも注意が必要です。
3月に18歳の誕生日を迎えていても、年初に17歳であれば制度を利用できません。
このように、相続時精算課税制度を活用する際は、受贈者が「その年の1月1日時点で18歳以上」という条件を確実に満たしていることが前提です。
親が代理で手続きをしても問題はないが、課税方式の選択は不可
未成年者が贈与を受ける際には、贈与契約書の作成などの手続きを、親権者が法定代理人として代行することが認められています。
そのため、受贈者が(法律行為のできない)未成年者であったとしても、一定の要件を満たせば、贈与の事実そのものは成立します。
ただし、相続時精算課税制度に関しては、そもそも制度の対象に「18歳未満の者」は含まれていないため、課税方法を「選択」する余地がありません。
未成年者への贈与は、結果的に暦年課税による贈与として自動的に取り扱われることになります。
相続時精算課税制度では、贈与を受ける側(受贈者)の選択によって初めて制度が適用される仕組みですが、未成年者はこの「選択」を行うことが制度上できません。
つまり、申告や届出を提出しても、年齢要件を満たしていない限り、その制度の枠組みに乗ることはできないのです。
したがって、未成年者に対して贈与を行う場合は、「相続時精算課税制度が使えるかどうか」ではなく、暦年課税制度の範囲内でどのように贈与するかを考えることが基本となります。
110万円以下の贈与であれば申告も不要ですが、それを超える場合は申告義務が発生するため、適切な記録・管理が必要です。
想う相続税理士
未成年者のうちから贈与を計画する場合には、贈与の時期や金額を適切に調整しながら、長期的な相続(税)対策につなげていくことが成功のカギとなるでしょう。