相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における未成年者控除について、お話します。
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今日(令和4年4月1日)から未成年者控除の額が変わります
財産を取得した相続人が未成年者の場合には、相続税を安くする制度があります。
今までは、「満20歳になるまでの年数1年につき10万円」の控除額でした。
胎児の方の場合には、10万円×20年=200万円です。
民法の成年年齢引き下げにより、今日(令和4年4月1日)以後に財産を取得する方については、「満18歳になるまで」で計算しますので、胎児の方の場合には、10万円×18年=180万円となります。
未成年者の相続税が少ないと控除額が余る?
今日、相続があって、胎児の相続人がいる場合に、その胎児の方について計算された相続税が50万円だとします。
この場合、180万円以下ですので、相続税はかからないのですが、未成年者控除の額が130万円余ってしまいます(50万円△180万円=△130万円)。
この余りは、その胎児の方の扶養義務者の相続税から控除できます。
未成年者の方は、これからお金がかかるので、相続税を安くしてあげる、というのが未成年者控除の趣旨です。
ですから、本来、未成年者控除は、未成年者の相続人の相続税に適用するモノなのですが、その未成年者の教育費等の負担をするのは扶養義務者なんだから、余った残りの分で、その扶養義務者の相続税を安くしてあげる、ということになっています。
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その未成年者が財産を取得していないとダメ!
未成年者は、自分で法律行為をすることができません。
ですから、遺産分割協議に1人で参加することができません。
相続人の誰か1人でも参加しない人がいると、遺産分割協議は成立しませんから、未成年者の相続人がいる場合には、特別代理人を選任し、代わりに遺産分割協議に参加してもらいます。
このような状況になるのを避けるために、遺言を作成する場合があります。
全財産を網羅する有効な遺言があれば、遺産分割協議が不要になるからです。
ただし、この遺言による遺産分けの内容に注意が必要です。
未成年者である相続人が財産を全く相続しない内容になっていると、「扶養義務者の相続税を安くしてあげる」ということができなくなるからです。
未成年者控除は、「財産を取得した未成年の相続人」がいる場合に適用があります。
未成年の相続人の方がいたとしても、その方が財産を取得していないのであれば、「財産を取得しない→相続税関係ない→未成年者控除の話が出てこない」からです。
未成年者に相続税がかからない場合でも、未成年者控除が適用できる場合がある!
未成年者である相続人が「財産を取得して」「相続税がかからない」というパターンもあり得ます。
未成年者控除の適用を受ける前に、贈与税額控除や配偶者の税額軽減の適用を受けて、計算された相続税がゼロになっている場合です。
この場合には、未成年者の相続人の相続税を安くすることはできませんが、未成年者の相続人が「財産を取得して」いるので、未成年者控除の適用は可能となり、扶養義務者の相続税から未成年者控除の額を丸々控除することができるのです。
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