【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続人の方が生前に亡くなった方の医療費を負担していた場合の債務控除の取扱い

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続人の方が生前に亡くなった方の医療費を負担していた場合において、その負担額が債務控除の対象になるか、ということについて、お話します。


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亡くなった後に支払った医療費はどうなる?

亡くなった方が入院されていたような場合には、亡くなった月の入院医療費などを、相続人の方が相続後にお支払いになることがあります。

亡くなった方が亡くなる直前に受けていた医療や介護に係る費用は、通常、亡くなった方がご自分で支払うことができません。

支払っていない「未払」の費用、つまり「未払金」が相続開始時点にあるということになり、その未払金という「債務」を相続人が引き継ぐことになります。

この債務は、相続税の申告において、土地や預貯金などの財産の金額から控除することができます(「債務控除」といいます)。

相続税法(一部抜粋)
第13条 債務控除
相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用

亡くなる前に支払った医療費はどうなる?

令和7年2月下旬に亡くなった方がいらっしゃって、その方の2月の医療や介護に係る費用を、長男(相続人の方)が3月にお支払いになったとします。

これは、上のパターンになります。

では、その方の1月の医療や介護に係る費用を、長男が2月の上旬(亡くなる前)にお支払いになっているとしたら、どうなるでしょうか?

この1月の医療や介護に係る費用は、2月下旬の相続開始時点では既に支払済ですので、医療機関等に対して「未払」の状態にはなっていません。

相続人に対する未払になっているのであれば債務控除が可能

出典:TAINS(相続事例大阪局WAN2705)(一部抜粋加工)
相続人の負担した医療費の債務控除
【照会要旨】
被相続人は病気療養中のところ本年3月に死亡した。被相続人には約7億円の遺産があったが、病気療養中の医療費1,207,522円は、その全額を長男が支払った。
なお、相続開始時の未払医療費は零で、長男は当該医療費を所得税の医療費控除の対象としていない。
長男が支払った医療費相当額は、被相続人の債務に含まれるか。
【回答要旨】
長男が支払った医療費相当額が、立替払いと認定できるのでれば、被相続人の債務に含めて差し支えない。
なお、扶養義務の履行として支払われたのであれば、この限りではない。

親子間には、相互扶養義務があります。

民法(一部抜粋)
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

長男には親を扶養する義務がありますので、その義務に基づき、医療や介護に係る費用を親の代わりに払ってあげる(親には負担させない)、ということは当然あり得ます。

この場合には、医療費を負担しても、債務控除の対象とはなりません。

それとは違い、親が自由に体を動かせないため、代わりに長男が一時的に立て替えて払った(最終的には親にちゃんと負担してもらう、後で親に請求する)、という場合には、親は相続開始時点において、1月の医療や介護に係る費用について、医療機関等に対しては「未払」の状態ではないけれども、長男に対しては「未払」の状態(立て替えて支払ってもらった医療費を精算していない)ということになりますので、債務控除の対象となります。

想う相続税理士

「医療費控除の対象としていない」とありますが、医療費控除の対象にする場合には、扶養義務に基づいて親の代わりに払ってあげた、これは自分の費用なのだ、と申告していることになりますので、債務控除の対象にはなりません。