相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における「家なき子特例」の要件について、お話します。
「家なき子」が自宅敷地を相続で取得すると相続税が安くなる
相続税には、「家なき子特例」と呼ばれるモノがあります。
「家なき子」とは、「持ち家がない親族」という意味です。
相続税の申告には、「小規模宅地等の特例」という制度があり、相続財産のうち、一定の「居住用」または「事業用」の土地については、遺族の大事な生活基盤であることを考慮し、一定の面積まで、50%引き、または、80%引きで評価することができます。
家なき子特例は、この小規模宅地等の特例の中の「特定居住用宅地等」の適用パターンの1つであり、具体的には、亡くなった方のご自宅の敷地を、持ち家がない親族が相続で取得した場合に、適用を受けることができます。
では、旦那さんが奥さんの親名義の家に同居している場合、持ち家がないので、家なき子特例の適用を受けられるのでしょうか?
自分が家を持っていなくてもダメな場合がある
この家なき子特例の要件については、次のように定められています。
租税特別措置法(一部抜粋加工)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
(1) 相続開始前3年以内に相続税法の施行地内にある①当該親族、②当該親族の配偶者、③当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人として政令で定める法人が所有する家屋(相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがないこと。
(2) 当該被相続人の相続開始時に当該親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
「①当該親族」、つまり、「その亡くなった方のご自宅の敷地を相続で取得した方」が「所有する家屋に居住したことがない」、つまりこれが「持ち家に住んだことがない」=純粋な「家なき子」ということです。
その次に「②当該親族の配偶者」とありますので、例えば、亡くなった方の長女が、結婚相手である夫の持ち家に住んでいる場合、「居住したことがない」には該当しなくなりますので、家なき子特例は適用不可です。
妻の曽祖父母の家に住んでいてもダメ
さらにその次に「③当該親族の三親等内の親族」とあります。
三親等内の「親族」ですから、血縁関係のある「血族」だけでなく、妻側の「姻族」も含まれます。
参考
三親等内の親族とは?ナブテスコグループ健康保険組合
上記をご覧いただくと、本人側・配偶者側ともに、上は曽祖父母までが三親等内の親族に該当することがお分かりいただけると思います。
ですから、奥さんの親名義の家に同居している場合には、「居住したことがない」には該当しなくなりますので、家なき子特例は適用できません。
想う相続税理士