相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告において財産を評価する場合の「時点修正」の具体的な計算方法について、お話します。
財産評価基本通達の従わない適正な時価評価とは?
財産評価基本通達は法律じゃないから無視していい?上記の記事で、
(財産評価基本通達とは)別の方法により評価したのであれば、「その評価額が時価である」ということを説明(疎明)できなければなりません。
とお話しました。
上記の記事のさらにベースとなった記事
相続後の売却金額をベースにマンションの相続税評価額を計算していいとされた事例において、
今回ご紹介する裁決事例では、相続財産であるマンションについて、実際に売却した金額をベースに評価していい、という結論になりました。
とお話したのですが、別の方法により評価した金額が時価である、ということを疎明するために、最も重要な点があります。
その評価額が「亡くなった日時点」の時価と言えるか?
相続税法(一部抜粋加工)
第22条 評価の原則
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
相続税の計算をする際、その財産の評価額は、「亡くなった日時点」における時価で計算しなければなりません。
ということは、相続後の売却金額(上記事例のマンションの場合には「3,800万円」でした)はそのまま使えません。
それは、ザックリ言うと「売却時点」の時価だからです。
つまり、「売却時点」の時価を「亡くなった日時点」の時価に修正する必要があります。
時点修正により「亡くなった日時点」の時価を計算する
今回取り上げた裁決事例では、
出典:TAINS(F0-3-249)(一部抜粋加工)
平22-09-27裁決
当審判所が中古マンションの価額変動率について調査したところ、本件相続開始日から本件売買契約時までの本件マンションの時価変動率は、国土交通省土地・水資源局が平成21年3月24日付で発表した新宿区の住宅地における「東京圏の市区の対前年変動率」に基づき求めた変動率マイナス4.4%(1年間の変動率マイナス8.8%×6か月/12か月)を採用する方法が相当であると認められる。
よって、本件相続開始日における本件マンションの時価を算定すると、別表5のとおり、39,748,953円となる。
別表5 本件マンションの審判所認定額
審判所認定額 | 算定根拠 |
39,748,953円 | 〔本件マンションの売却価額〕38,000,000円÷〔時点修正率〕(1△0.044)=〔本件相続開始日における本件マンションの価額〕39,748,953円 |
と計算されました。
↓
「本件売買契約は相続開始日からおおむね6か月を経過後に締結された」(TAINS(F0-3-249)より)
↓
「1年間で時価が8.8%下がっている」ということは、半年間(6ヶ月)では4.4%(=8.8%×6ヶ月/12ヶ月)下がっている
↓
「亡くなった日」から6ヶ月後の「売却時点」は時価が4.4%低い
↓
逆に言うと、「亡くなった日時点」の時価は「売却時点」の時価よりも4.4%高い
ということになりますから、上記の「別表5 本件マンションの審判所認定額」にあるとおり、3,800万円をベースにそれより高い金額を計算する(「割り戻す」)ということになります。
想う相続税理士秘書
想う相続税理士
請求人らは、その時点修正の基となる不動産の価格の変動率について、国土交通省地価調査課が平成20年11月に発表した「主要都市の高度利用地地価動向報告」(以下「地価調査課レポート」という。)を基に、本件相続開始日から本件売買契約までの地価変動率を3%の下落として、本件マンションの価額を求めているが、地価調査課レポートは、四半期ごとの地価変動率に基づくものであり、この数値は中古マンションの価額の変動率を表したものではないと認められることから、請求人らの主張する地価変動率をもって時点修正することは相当ではない。