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相続税対策としての贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)。損する場合もあれば得する場合もある


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相続開始前3年以内でもセーフになる特別な贈与

「贈与税の配偶者控除」という特例があります。

婚姻期間が20年を過ぎた後に夫婦間で居住用不動産(自宅)や居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、基礎控除額110万円に加え、最高2,000万円まで非課税となります。

通常、相続開始前3年以内の贈与財産は、相続税の課税対象に加算されます。

「亡くなりそうだから、相続税がかからないように、その前に贈与を受けよう」というのは、できないようになっているのです。

ところが、この配偶者控除で贈与された非課税部分については、相続税の課税対象に加算しません。

駆け込み的な贈与でも大丈夫ということです。

相続税には大きな非課税枠がある

相続税の計算においては、「遺産に係る基礎控除額」(3,000万円+600万円×法定相続人の数)という全体非課税枠があります。

自宅を含めた全財産の合計金額がこの全体非課税枠以下であれば、相続税がかからない(相続税の申告の必要がない)ので、その場合には、相続税対策としての贈与は不要(贈与税の配偶者控除なんてやらなくてもいい)、ということになります。

相続税には配偶者にだけ認められた大きな非課税枠がある

全財産の合計金額が、この全体非課税枠を超える場合であっても、配偶者なら、相続税の計算上、どれだけ財産を相続しても、1億6,000万円までは非課税になります。

これを、「配偶者の税額軽減」といいます。

財産全体の金額が大きいと、1億6,000万円よりも配偶者非課税枠は拡がります。

ですから、贈与税の配偶者控除の適用を受けて贈与をしなくても、相続でもらっても無税(非課税)になる可能性があります。

相続税の申告が必要

ただし、この配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、相続税の申告が必要です。

相続税の申告をしたくない場合で、かつ、贈与税の配偶者控除の適用を受ければ、相続税の申告が不要になる、という場合には、贈与税の配偶者控除の適用を検討しましょう。

相続税には自宅の敷地について非課税枠がある

配偶者が自宅の敷地を相続した場合、330㎡までの部分については、「小規模宅地等の特例」により、8割引で評価することができます。

配偶者の相続分が1億6,000万円を超えていたとしても、その中に自宅の敷地がある場合、この小規模宅地等の特例の適用により、1億6,000万円以下となり、相続税が無税(非課税)になる可能性があります。

相続税の申告が必要

この小規模宅地等の特例も、適用を受けるためには、相続税の申告が必要です。

ですから、相続税の申告をしたくない場合で、かつ、贈与税の配偶者控除の適用を受ければ、相続税の申告が不要になる、という場合には、贈与税の配偶者控除の適用を検討すべきです。

自宅の敷地が広大で単価が安い場合

小規模宅地等の特例は、330㎡までしか適用を受けることができません。

贈与税の配偶者控除は、自宅敷地の面積は関係なく、金額で2,000万円まで適用可能です。

自宅の敷地が広大で単価が安い場合には、贈与税の配偶者控除の方が節税効果が高くなる可能性があります。

自宅建物は相続税の特例がない

自宅の敷地については、「贈与税の配偶者控除」(相続税の)「小規模宅地等の特例」と選択肢が2つありますが、自宅建物については、相続税の計算上は、特例がありません。

「贈与税の配偶者控除」のみです。

相続税・贈与税以外の税金にも注意

相続や贈与で財産を移転した場合、かかるのは相続税や贈与税だけではありません。

登録免許税

相続による移転の方が安く済みます。

不動産取得税

相続による移転は非課税です。

贈与による移転にはかかります。

民法改正との違いに注意!

婚姻期間が20年以上の夫婦に対する居住用不動産(自宅)の贈与は、今までは、民法上「相続分の前渡し」と考えられていて、公平な遺産分けをする場合には、その自宅を含めた上でするべき、とされていました。

ところが、民法の改正により、令和元年7月1日以降においては、その自宅は含めない、それ以外の財産で公平に分ければ、それで公平な遺産分けだ、ということになりました(ざっくり言うと)

配偶者が半分相続できるとすれば、先にもらった自宅以外の財産について、半分もらえるので、先にもらった自宅も含めると、半分以上の財産を取得できることになります。

自宅を贈与するということは、配偶者の生活を保障してあげよう、という意思の表れなんだから、それは尊重してあげよう、先に贈与した自宅は遺産分けの対象外でOK!という趣旨なんです。

居住用不動産を取得するための金銭は対象外

贈与税の配偶者控除の適用があっても、それが居住用不動産を取得するための金銭である場合には、自宅ではないので、この「遺産分けに含めない」の規定は適用されません

2,000万円を超えてもOK

2,000万円という上限は、税法上のものです。

2,000万円を超えていても、この民法の「遺産分けに含めない」の規定は適用されます。

遺言でもOK

税法上は、遺言であげても贈与税の配偶者控除(2,000万円非課税)は適用されません。

でも、この民法の「遺産分けに含めない」の規定は適用されます