相続税専門税理士の富山です。
今回は、貸付金・預け金について、お話します。
贈与があったと認められないと相続財産になる
生前に亡くなった方とその親族などの間でお金が動いている場合、それが「贈与」なのか、それとも「貸付」なのかというところが、相続税の申告または相続税の税務調査で焦点となります。
例えば、亡くなった夫の口座から妻の口座に毎月お金が動いていて、妻はそのお金を生活費の支払に充てているのですが、全部を使い切っていない場合、どのような取扱いになるでしょうか。
毎月100万円のお金が夫の口座から妻の口座に異動していて、妻は40万円しか使っていないような場合です。
この例ですと、妻の口座には毎月差額の60万円が貯まっていき、年間720万円のお金がプールされることになります。
10年間で7,200万円になります。
「夫と妻は夫婦で一心同体なんだから夫の稼ぎが妻の口座に蓄積したって問題ないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、この7,200万円について、贈与税の課税も受けず、相続税の課税も受けなくてよい(無税で夫から妻に7,200万円が移転する)ということが果たして通用するでしょうか(しません)。
このような場合、妻の口座には妻のパートや年金などの収入も入っているでしょうから、この口座がまるまる夫の名義預金であるとは定義しにくいです。
想う相続税理士秘書
この貯まった部分のお金は、夫が妻にあげたのか、それとも夫が妻に預けたのか、の実態を明確にする必要があります。
「夫婦間のお金の動きまで相続税や贈与税のことを考えなければいけないの?」と思われるかもしれませんが、夫婦間だからといって、お金をどういう風に動かしてもいい(課税を受けない)ということはありません。
相続人の方が税務調査でいきなり指摘されると、考え方の違いにショックを受けるところでもあります。
ちょっと話せば分かっちゃうお客様もいらっしゃいます
しかし、ある相続のお客様と、亡くなった方の生前の親族との間のお金の動きについて、ポイントとなる見方などについてお話した時、「じゃあ富山さん、母親の通帳の残高の増え具合を確認すればいいんじゃないですか?」とおっしゃった相続人の方がいらっしゃいます。
つまり、夫婦のそれぞれの収入が混在しているのであれば、差額で見て行く、という考え方です。
非常に理にかなっていると思います。
余計にもらった分だけを差額で財産計上するワケですから。
夫婦間のお金の異動に問題があるワケではありません
妻の口座に夫の稼いだお金が入金されること自体が問題なワケではありません。
家計を預かっているのが妻であれば、妻の口座にお金があった方が家計を回しやすいでしょう。
しかし、生活費として妻にお金を渡すのであれば、必要な分だけを必要な都度、渡せばいいワケで、そこにお金が貯まっているとなると、それは生活費を渡しているとは認められません。
都合のいいように考えようとしないことが重要
「税務署がどう見るか」の視点が重要です。
正確には、「税務的にはその取引をどう考えるのか」ということをきちんと検証するということです。
例えば、親族間でお金の貸し借りがあったと言いつつ、その貸付金がずっと返済を受けていないような場合、それは貸付金と言えるのでしょうか。
そのお金が最初に動いた時に、贈与があったものとみなされる危険性があります。
形式上は貸し借りとなっていたとしても、実態がどうかという視点が重要です。
想う相続税理士