非上場株式の評価における純資産価額の計算上の注意点1
借地権
純資産価額は、評価対象法人の貸借対照表をベースに計算するが、貸借対照表に記載されていないものも計上する必要がある
例として借地権が挙げられる
そのためには、不動産の所有状況・利用状況をきちんと把握する必要がある
まず、損益計算書や内訳書などから地代の支払の有無を確認する
地代の支払がないからといって、スルーしてはいけない
地代の支払がなくても、借地権が発生する場合がある
借地権の評価額を算出するための決められた計算式があるのだが、地主が社長やその親族だったりすると、設定されている地代の金額がテキトーなことが多いため、きちんと計算してみないと、いくらになるかは分からない
また、過去において税務署に一定の書類を提出しているかどうかで評価額が変わる場合もある
仮決算ベースか直前期末ベースか
純資産価額は、原則として、課税時期(相続時点・贈与時点)に仮決算を行い、その金額をベースに計算する
相続であればその亡くなった日時点の、贈与であればその贈与日時点の、その非上場株式の価値を評価する必要があるからである
先ほど「純資産価額は、評価対象法人の貸借対照表をベースに計算する」とお話したが、そのためには、亡くなった日時点の貸借対照表が必要となる
しかし、通常は年に1回、法人の決算日を基準として貸借対照表を作成するだけなので、相続時点・贈与時点の貸借対照表がないのであれば、非上場株式の評価のために、決算(仮決算)を実施するしかない
しかし、年の途中で決算を実施するというのは、実務的に難しい面が多い
そこで、例外として、直前期末の貸借対照表をベースに計算しても認められる
ただし、それは直前期末の貸借対照表をベースに計算しても、課税上弊害がない、と認められる場合
つまり、直前期末から課税時期までの間に、資産・負債に著しい増減がなく、その増減が評価額に与える影響が少ない、と認められることが前提
したがって、仮決算を行わないにしても、残高試算表などで、進行事業年度の期首からの数字の推移を確認する必要がある
原則(課税時期において仮決算を行いその金額をベースに計算)ではなく、例外(直前期末の貸借対照表をベースに計算)を採用するということは、評価時点を直前期末にスライドさせる、ということではない
評価時点はあくまでも課税時期であり、その課税時期の資産負債の金額として、(課税上弊害がないことを要件として)直前期末の金額を採用する、ということ