【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

財産評価基本通達を無視して相続税の申告をしてもいい?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税申告における財産評価について、お話します。


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地積規模の大きな宅地の評価で相続税が安くなる

戸建住宅に適した面積の土地(①)であれば、買い手が多いため、それなりの金額で売れるが、逆に、広い(広過ぎる)土地(②)は(いい単価で)売れない(買い手が限定される)

相続財産としての土地を路線価方式により評価する場合、上記①と②が同じ道に接していると、同じ路線価で評価することになる

土地が広いと、奥行価格補正率等により評価額が下がるが、それも限定的である

①はすぐにいい値段で売れて換金できるが、②はなかなか売れない

同じ単価(路線価)で相続税を計算すると、②の相続税の負担が重くなる

そこで、一定の要件を満たす広い土地については、「地積規模の大きな宅地の評価」というモノを適用することができ、最低でも20%減で評価できる

地積規模の大きな宅地の評価を適用できない場合

地積規模の大きな宅地の評価は「一定の要件を満たす」必要がある

逆に言えば、一定の要件を満たさないと、広い土地でも安く評価できない

例えば、地積規模の大きな宅地の評価を適用する場合には、その土地の路線価図上の地区区分は「普通住宅地区」「普通商業・併用住宅地区」でなければならない

それ以外の地区区分(例えば「繁華街地区」)に所在する土地は、適用不可である

地積規模の大きな宅地の評価を適用できないことにより、評価額が時価よりもかなり高くなってしまう場合、売れない土地(売れたとしても安い売却金額になってしまう土地)に対して多額の相続税を負担することになる

通達も鑑定評価も絶対ではない

このような場合には、不動産鑑定士に依頼して、鑑定評価をしてもらうのも手

地積規模の大きな宅地の評価は、「財産評価基本通達」(20-2 地積規模の大きな宅地の評価)上の規定

つまり、法律ではない

そこで、相続税法(法律)を見てみる

相続税法
第22条 評価の原則
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

つまり、法律上は「時価」で評価しろ、と言っている(だけ)

時価で評価すれば、税務署に否認されない

この時価で評価する、という観点から不動産鑑定士に鑑定評価してもらうワケだが、その評価額が税務署に是認されるとは限らない

それが「時価」として認められなければ否認される

通達は法律ではないから意味がない、というワケではない

課税の公平を図るためには、評価の基準を定めることは重要

それは納税者にとってもそうだが、税務署側においても同様

そもそも、通達は「行政規則」であり税務署側の規定

それが公開されることにより、納税者側・税務署側が同一の基準に沿って申告・課税をすることで、円滑な税務が実現する

しかし、土地は1つとして同じものはなく、個別性が極めて強い

通達は、標準的な土地を評価するのには適しているかもしれないが、イレギュラーな(標準的ではない)土地の評価には向いていない場合もある

したがって、通達に準拠した評価をしても、相続税法上の時価にならない場合があるのも事実

想う相続税理士

通達(財産評価基本通達)に従って評価するか否かにかかわらず、その評価額が「時価」なのかを検討する必要があります。