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「地積規模の大きな宅地」に該当すれば相続税が安くなる
平成30年以降の相続・贈与は「地積規模の大きな宅地」、平成29年以前の相続・贈与なら「広大地」に該当すれば、相続税が安くなる
どちらも広い土地なら安く評価できる、という内容
住宅地域の広い土地は、専門業者が買った後に、分譲して売るのが普通。
そんな時には、道を作ったりして売れない部分も出てくるし、きれいに区画を作るのにお金もかかる。
だから、相続した後、専門業者に売ろうと思ったら、近くの普通の広さの土地よりも安くしないと買ってもらえない(専門業者は安く買えれば、その後お金がかかっても利益が確保できる)。
普通の広さの土地なら、買ってそのまま売れるから、安くなくても買ってくれるけど。
そういう現実を踏まえて、相続税を計算する際の財産評価においても、広い土地は安く評価できるという訳。
想う相続税理士
「地積規模の大きな宅地」に該当した場合、土地の評価額に「規模格差補正率」をかけて安く評価する
例えば、三大都市圏以外の地域で面積が1,000㎡だと、規模格差補正率は「0.80」。「×0.80」するので、要は2割引で評価できる
面積が大きくなればなるほど、規模格差補正率は小さくなっていく。その分、安く評価できる
想う相続税理士
「地積規模の大きな宅地」に該当するためには、色々な要件があるのです。
その要件をきちんと押さえることが重要。
「地積規模の大きな宅地」の要件の1つ目は「面積」
「三大都市圏」にある土地は500㎡以上
「三大都市圏以外」にある土地は1,000㎡以上
(国税庁ホームページより抜粋)
三大都市圏
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
③中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
想う相続税理士
「地積規模の大きな宅地」の要件の2つ目は「地区区分」
路線価地域
財産評価基本通達
(地区)
14-2 路線価方式により評価する地域(以下「路線価地域」という。)については、宅地の利用状況がおおむね同一と認められる一定の地域ごとに、国税局長が次に掲げる地区を定めるものとする。(平3課評2-4外追加)
(1)ビル街地区
(2)高度商業地区
(3)繁華街地区
(4)普通商業・併用住宅地区
(5)普通住宅地区
(6)中小工場地区
(7)大工場地区
想う相続税理士
どの地区区分に該当するかは、路線価図を見れば分かります。
倍率地域
国税庁タックスアンサー
No.4609 地積規模の大きな宅地の評価
2 「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地
(中略)倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。
他の要件を満たしていないとダメ!
想う相続税理士
4つのNGワードに該当すると「地積規模の大きな宅地」の適用はできない
想う相続税理士
逆に言うと、これらに該当しなければ、とりあえずセーフということ!
国税庁タックスアンサー
No.4609 地積規模の大きな宅地の評価
1 次の(1)から(4)のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。
(1) 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除きます。)に所在する宅地
(2) 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
(3) 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
(4) 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地
「市街化調整区域」はアウト!でも・・・
だから、専門業者が広い土地を安く買って分譲して売る、なんてことは起こらないので、「地積規模の大きな宅地」に該当することはないんです。
でも、上記のタックスアンサーNo.4609の(1)のカッコ書きのエリアに該当すればセーフ!
想う相続税理士
都市計画法
第三十四条 前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。
一 主として当該開発区域の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
二 市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源その他の資源の有効な利用上必要な建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
三 温度、湿度、空気等について特別の条件を必要とする政令で定める事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物で、当該特別の条件を必要とするため市街化区域内において建築し、又は建設することが困難なものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
四 農業、林業若しくは漁業の用に供する建築物で第二十九条第一項第二号の政令で定める建築物以外のものの建築又は市街化調整区域内において生産される農産物、林産物若しくは水産物の処理、貯蔵若しくは加工に必要な建築物若しくは第一種特定工作物の建築若しくは建設の用に供する目的で行う開発行為
五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る土地において当該所有権移転等促進計画に定める利用目的(同項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設である建築物の建築の用に供するためのものに限る。)に従つて行う開発行為
六 都道府県が国又は独立行政法人中小企業基盤整備機構と一体となつて助成する中小企業者の行う他の事業者との連携若しくは事業の共同化又は中小企業の集積の活性化に寄与する事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
七 市街化調整区域内において現に工業の用に供されている工場施設における事業と密接な関連を有する事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物で、これらの事業活動の効率化を図るため市街化調整区域内において建築し、又は建設することが必要なものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
八 政令で定める危険物の貯蔵又は処理に供する建築物又は第一種特定工作物で、市街化区域内において建築し、又は建設することが不適当なものとして政令で定めるものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
九 前各号に規定する建築物又は第一種特定工作物のほか、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は不適当なものとして政令で定める建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
十 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
十一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの
十二 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの
十三 区域区分に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更して市街化調整区域が拡張された際、自己の居住若しくは業務の用に供する建築物を建築し、又は自己の業務の用に供する第一種特定工作物を建設する目的で土地又は土地の利用に関する所有権以外の権利を有していた者で、当該都市計画の決定又は変更の日から起算して六月以内に国土交通省令で定める事項を都道府県知事に届け出たものが、当該目的に従つて、当該土地に関する権利の行使として行う開発行為(政令で定める期間内に行うものに限る。)
十四 前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為
想う相続税理士
形式的に文章を読んで思考判断に制限を加えることなく、「専門業者が広い土地を安く買って分譲して売る」ことが可能なエリアなのかをチェックしましょう。
「非線引き区域」は「市街化調整区域」に該当しない
「市街化調整区域」と「市街化区域」を分けていない区域です。
「非線引き区域」は「市街化調整区域」ではないので、ここでのNGには該当しません。
想う相続税理士
「工業専用地域」はアウト
想う相続税理士
ですから、該当すればアウトです。
用途地域
(住居系)
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
田園住居地域
準住居地域
(商業系)
近隣商業地域
商業地域
(工業系)
準工業地域
工業地域
工業専用地域
「指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上」ならアウト
この容積率には、用途地域ごとの制限があります。
これを指定容積率と言います。
指定容積率が低いと、高い建物が建てられなくなりますので、高層ビルが林立する商業エリアは指定容積率が高くなっています。
逆に、低階層の戸建て住宅エリアは、指定容積率を下げることにより、高層ビルなんかが建てられなくなっている、ということです。
この指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上だと、そこはビルなどの大規模な建物が建築されるようなエリアであり、「専門業者が広い土地を安く買って分譲して売る」ことにより戸建て住宅を建てるようなエリアではないため、アウトという事になります。
想う相続税理士
「基準容積率」は関係ない
想う相続税理士
「大規模工場用地」に該当するとアウト
財産評価基本通達
(大規模工場用地)
22-2 前項の「大規模工場用地」とは、一団の工場用地の地積が5万平方メートル以上のものをいう。ただし、路線価地域においては、14-2((地区))の定めにより大工場地区として定められた地域に所在するものに限る。(平3課評2-4外追加)
(注) 「一団の工場用地」とは、工場、研究開発施設等の敷地の用に供されている宅地及びこれらの宅地に隣接する駐車場、福利厚生施設等の用に供されている一団の土地をいう。なお、その土地が、不特定多数の者の通行の用に供されている道路、河川等により物理的に分離されている場合には、その分離されている一団の工場用地ごとに評価することに留意する。
倍率地域にある土地についての要件と考えましょう
しかし、路線価地域にある土地については、既にお話した通り、「普通商業・併用住宅地区」「普通住宅地区」にある土地であることが要件となっていますから、大工場地区に該当していれば、ここまで来る前にアウトになっているはず。
つまり、倍率地域にある土地についてのみ、この「大規模工場用地」に該当するか、チェックする形となります。
想う相続税理士