相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における生計一親族について、お話します。
生計一親族が相続で土地を取得すると相続税が安くなる
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
例えば、事業用の宅地等(特定事業用宅地等)の場合、亡くなった方の事業用の宅地等だけでなく、亡くなった方の生計一親族の事業用宅地等も、特例(400㎡まで評価額を8割減額)の対象となります。
子に多額の収入がある場合でも小規模宅地等の特例の適用可?
相続税に関する条文等には、生計一親族の定義がありません。
そこで、国税通則法基本通達を見てみます。
国税通則法基本通達(一部抜粋加工)
第46条関係 納税の猶予の要件等
(生計を一にする)
9 法第46条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる。
親に多額の財産があり、子に多額の収入がある場合、それぞれ自分のお金で生活できそうです。
どちらかがもう一方を金銭的に助けなくても大丈夫でしょう。
このような場合でも、例えば、子が親の土地で個人事業を営んでいる場合、その土地は特定事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用を受けられるのでしょうか?
同居していることが相続税の節税につながる!
先ほどの通達の条文の続きを見てみます。
国税通則法基本通達(一部抜粋加工)
第46条関係 納税の猶予の要件等
(生計を一にする)
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
同居していれば、基本的に生計一親族と考えてOKとしています。
この「明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合」には、生計一親族に該当しなくなってしまうのですが、通常の同居状態であれば、生計別とはならないと読める判決事例があります。
出典:TAINS(Z239-8288)
最高裁平成10年(行ツ)第146号所得税更正処分等取消請求上告事件(棄却)(確定)(一部抜粋)
納税者らと義父母が同一家屋(義父母所有)に居住しており、両家族の居住部分を廊下で区分することが可能であったとしても、その区分が家族の部屋割り程度に過ぎず、水道光熱費や電話代等について実費精算が行われていないなど両家族の生活費が明確に区分されていない事実関係の下においては、納税者らと義父母は所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)に規定する「生計を一にする親族」に該当し、納税者が義父母に支払った支払給与及び支払地代は必要経費にならないとされた事例
想う相続税理士