相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等の注意点について、お話します。
生計別親族に対する土地の貸付け
Zさんには長男Aさんがいます。
Aさんは結婚して実家を出て、ご自分の家族と一緒に生活しています。
つまり、ZさんとAさんは「生計別」親族の関係です。
AさんはZさんからイ土地を借りて、そこに建物を建て、八百屋さんを営んでいます。
AさんはZさんに対して、きちんと適正な金額の地代を支払っています。
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所得税法(一部抜粋)
第56条 事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しない
土地の貸付けにおける混同に注意
Zさんに相続が発生し、Aさんがイ土地を相続したとします。
このイ土地は、生前、ZさんがAさんに有償で貸し付けていた土地です。
つまり、亡くなった方の貸付事業の用に供されていた宅地等です。
そうすると、このイ土地は、貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのでしょうか?
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、申告期限まで、その貸付事業が継続していることが要件となります。
Aさんがイ土地を相続すると、「土地を貸している人はAさん」「土地を借りている人はAさん」になります。
自分が自分に貸す(自分が自分から借りる)ということはあり得ません(「混同」と言います)ので、Aさんがイ土地を相続した途端、貸付事業はストップすることになります。
つまり、申告期限までの事業継続要件を満たさない、ということになり、小規模宅地等の特例は適用できません。
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また、上記のイ土地を、長男Aさんではなく、Zさんと生計一親族にある三男Cさんが「無償」で借りて、そこに建物を建て、八百屋さんを営んでいた場合であれば、「特定事業用宅地等」として小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。