相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続が発生した場合に、司法書士と税理士のどちらに先に依頼すべきか、について、お話します。
相続登記と相続税申告
相続が発生し、相続財産の中に不動産がある場合には、その不動産の名義書換え(相続登記)をする必要があります。
また、相続税がかかる場合には、相続税申告をする必要があります。
それでは、相続登記と相続税申告はどちらを先にやるべきなのでしょうか?
相続登記を先にやると、何となくスッキリするかもしれません。
財産を引き継いで自分の名前にした、私は相続したんだ、と思えるからです。
相続税申告を先にやっても、スッキリするかもしれません。
一番面倒くさそうなモノを終わらせることができた、と思えるからです。
じゃあ、どちらが先でもいいのでしょうか?
相続登記の期限よりも相続税申告の期限の方が先に到来する
令和6年4月1日から始まった相続登記の義務化により、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。
それに対して、相続税申告は、亡くなった方が死亡したことを知った日(通常の場合には死亡日)の翌日から10ヶ月にする必要があります。
相続登記をゆっくりやっていたら、相続税申告が間に合わなかった、なんてことが起こり得ます(無申告加算税や延滞税が課税される場合があります)。
相続税申告を先にやった方が良さそうです。
遺産分けの内容により相続税は変わる
遺産をどう分けるかにより、相続税は変わります。
遺産分けA案と遺産分けB案があった場合、A案を選択するよりもB案を選択した方が、特例を適用することができて相続税の負担が少ない、というようなことが起こります。
そのような相続税のシミュレーションをせず、相続人がみんなA案に賛成したので、司法書士の先生に依頼してA案で相続登記をした、ということになれば、そのA案で相続税申告をすることになります。
結果として、相続税を多く納付することになります。
先に税理士に相続税申告を依頼すれば、特例の適用可否についてアドバイスを受けることができ、B案を選択することができるでしょう。
相続登記を先行させると遺産分けのバランスが崩れる可能性がある
「相続登記」とは、不動産の名義を変えることです。
つまり、対象が不動産にフォーカスされます。
相続財産である不動産が、C土地とD土地だけだったとします。
長女Eさんと二女Fさんが、「不動産は2つあって、大体同じような土地だから、1つずつ相続しよう」と言って、司法書士の先生に依頼して、C土地は長女Eさん、D土地は二女Fさんが相続する、という内容で相続登記をしたとします。
その後、税理士に相続税申告を依頼し、どのようなモノが相続税の課税対象になるのか、相続財産になるのかを確認し、資料収集を進め、不動産以外の相続財産も含めた全財産の一覧表が作成され、どの財産をどちらが相続するかの遺産分けの話し合いを始めたとします。
全体の財産を見て、2人で遺産分けを考えた場合、C土地・D土地どちらも長女Eさんが相続した方が良かったな、というようなことが起こり得ます。
先に不動産の遺産分けをしてしまったことで、遺産分けが難しくなってしまうことがあるのです。
先に税理士に相続税申告を依頼すれば、不動産のみを対象とする相続登記とは違い、全財産を網羅しなければならない関係上、全体の財産を把握することができます。
結果として、バランスのいい遺産分けを検討することができます。
想う相続税理士