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相続税の申告において株主の中に投資育成会社がいる非上場株式はどう評価する?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、投資育成会社が株主となっている非上場株式の評価方法について、お話します。

財産評価基本通達には次のような規定があります。

想う相続税理士秘書

財産評価基本通達(一部抜粋加工)
188-6 投資育成会社が株主である場合の同族株主等
188《同族株主以外の株主等が取得した株式》の(1)から(4)までについては、評価会社の株主のうちに投資育成会社(中小企業投資育成株式会社法(昭和38年法律第101号)に基づいて設立された中小企業投資育成株式会社をいう。以下この項において同じ。)があるときは、次による。
(1) 当該投資育成会社が同族株主(188《同族株主以外の株主等が取得した株式》の(1)に定める同族株主をいう。以下同じ。)に該当し、かつ、当該投資育成会社以外に同族株主に該当する株主がいない場合には、当該投資育成会社は同族株主に該当しないものとして適用する
(2) 当該投資育成会社が、中心的な同族株主(188《同族株主以外の株主等が取得した株式》の(2)に定める中心的な同族株主をいう。以下(2)において同じ。)又は中心的な株主(188《同族株主以外の株主等が取得した株式》の(4)に定める中心的な株主をいう。以下(2)において同じ。)に該当し、かつ、当該投資育成会社以外に中心的な同族株主又は中心的な株主に該当する株主がいない場合には、当該投資育成会社は中心的な同族株主又は中心的な株主に該当しないものとして適用する
(3) 上記(1)及び(2)において、評価会社の議決権総数からその投資育成会社の有する評価会社の議決権の数を控除した数をその評価会社の議決権総数とした場合に同族株主に該当することとなる者があるときは、その同族株主に該当することとなる者以外の株主が取得した株式については、上記(1)及び(2)にかかわらず、188《同族株主以外の株主等が取得した株式》の「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当するものとする
(注) 上記(3)の「議決権総数」及び「議決権の数」には、188-5《種類株式がある場合の議決権総数等》の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。


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最初に確認すべきことは筆頭株主グループの議決権割合

非上場株式を評価する場合、「その株式を相続で取得した方(納税義務者)=株主」の会社に対する影響力により、その評価方法は変わります。

その株主の議決権割合や、その株主の属する株主グループの議決権割合等が考慮されます。

ただし、それらの前に、その会社の「筆頭株主グループ」の議決権割合がポイントとなります。

その筆頭株主グループの議決権割合により、その会社が「同族株主のいる会社」なのか、「同族株主のいない会社」なのかを判断する必要があります。

財産評価基本通達(一部抜粋)
188 同族株主以外の株主等が取得した株式
178《取引相場のない株式の評価上の区分》の「同族株主以外の株主等が取得した株式」は、次のいずれかに該当する株式をいい、その株式の価額は、次項の定めによる。
(1) 同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式
この場合における「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以下同じ。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。
(以下省略)

投資育成会社が大株主だったら?

筆頭株主グループの議決権割合が30%以上の場合、「同族株主のいる会社」になります。

ただし、この場合の「同族株主」が投資育成会社のみの場合には、その投資育成会社は同族株主ではないものとして考えます。

つまり、「同族株主のいない会社」として株主判定を進めることになります。

中心的な同族株主・中心的な株主の判定時にも注意

上記(筆頭株主の投資育成会社は同族株主ではないものとして考える)の取扱いがなかった場合、つまり、投資育成会社が筆頭株主ではなかった場合でも、油断してはいけません。

その後の「その株式を相続で取得した方(納税義務者)以外に中心的な同族株主がいるかどうか」の判定の際に、「中心的な同族株主」が投資育成会社のみの場合には、その投資育成会社は中心的な同族株主ではないものとして考えます。

また、上記(筆頭株主の投資育成会社は同族株主ではないものとして考える)の取扱いがあった場合でも、その後の「その株式を相続で取得した方(納税義務者)以外に中心的な株主がいるかどうか」の判定の際に、「中心的な株主」が投資育成会社のみの場合には、その投資育成会社は中心的な株主ではないものとして考えます。

投資育成会社の議決権数を除外して同族株主を判定

今までのお話は、投資育成会社の議決権数も分母に含めた上でのお話でしたが、含めずに(投資育成会社の議決権数を控除して)議決権割合を計算した場合に同族株主に該当する方がいる場合には、その方以外の方が取得した株式は、今までのお話は関係なく、「同族株主以外の株主等が取得した株式」として配当還元方式を適用して評価します。

想う相続税理士

「投資育成会社は議決権を有していても会社を支配することを目的としていない」という性質を考慮した取扱いとなっています。