相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方が遺言を残していた場合に、その遺言が無効であることの確認を裁判所に求める訴訟が提起されている場合の、相続税の計算について、お話します。
遺言が有効かどうかは形式だけの問題ではない
遺言にはいくつか種類があります。
もっともイメージしやすいのは、「自筆証書遺言」ではないでしょうか?
亡くなった方がご自分の字で自分の想いを書き残す、というモノです。
この自筆証書遺言は、決められた形式要件を満たしていないと「無効」になってしまいます。
ですから、「公正証書遺言」の方がいい、と言われています。
公証役場で公証人の方に作成していただく遺言なので、「無効」になりにくいのです。
しかし、公正証書遺言だったら絶対に安心か、というと、実はそうではありません。
もちろん、公証人の方はきちんとした手順で遺言を作成してくださるワケですが、「その遺言は、本人の意思によるモノではない」とか「その遺言を作成した時には、その遺言者には意思能力がなかった」という主張により、その遺言の有効性が問われる場合があるのです。
配偶者は亡くなった方の財産形成の最大の貢献者
配偶者の方が取得した財産については、
- 財産のうち配偶者の法定相続分(お子さんがいる場合には1/2)相当額
- 1億6,000万円
「最低でも1億6,000万円」の非課税枠がある、ということです。
この特例を「配偶者の税額軽減」と言います。
この特例の適用を受けられるのは、「配偶者が取得した財産」です。
遺産分けがモメてしまい、遺産未分割の状態の場合、財産について誰が取得するか決まっていないワケですから、この特例の適用を受けることはできません。
配偶者に財産をあげるという内容の遺言について訴訟が提起されている場合
亡くなった方が公正証書遺言を残していて、その内容が、配偶者に財産をあげる、という内容だった場合、スムーズにいけば、その配偶者が遺言により取得した財産については、配偶者の税額軽減を適用することができます。
しかし、その遺言について遺言無効確認訴訟が提起されている場合、その遺言は有効ということになるかもしれませんが、無効ということになるかもしれません。
つまり、配偶者がちゃんと相続できるか分からない、と考えられますので、このような場合には、配偶者の税額軽減は適用できないのでしょうか。
その遺言は訴訟の対象にはなっていますが、形式的には有効な遺言です。
つまり、配偶者は今の時点で、その遺言書に記載された財産を取得することができますので、配偶者の税額軽減を適用して相続税を計算することができます。
想う相続税理士