相続税専門税理士の富山です。
今回は、同族会社の株式の評価額について、お話します。
同族会社の株式も相続税の課税対象
亡くなった方が、親族が経営しているような同族会社の株式を所有していた場合、その株式も相続税の課税対象となります。
株式が上場されていれば、その証券取引所の株価を基に計算することができるのですが、上場されていない同族会社の株式は、そのような公表されている株価はありません。
そこで、同族会社の株式の場合、
- 類似業種比準価額方式・・・評価対象会社と事業内容が類似する上場企業の株価をベースに計算
- 純資産価額方式・・・資産から負債を控除した金額をベースに計算
- 配当還元方式・・・株主に支払う配当の金額をベースに計算
純資産価額による評価額がゼロなら株価はゼロ?
会社の規模やその株式を所有する株主の持株割合などに応じて、上記のどの方式を採用するか、場合によっては、2つの方式を折衷して評価するかなど、評価上のルールが定められています。
しかし、どのパターンでも、純資産価額方式で評価してよいことになっています。
例えば、その株式を所有する株主の持株割合が高く、評価対象会社が会社規模の大きい「大会社」に該当する場合には、「類似業種比準価額」と「純資産価額」のいずれか低い金額を採用することができます。
ということは、利益がものすごく出ていて、類似業種比準価額がとんでもなく高くなっていても、純資産価額がゼロだったら、低い方を採用できるので、その会社の株式の評価額はゼロということです。
純資産価額は「資産△負債」で計算します。
ですから、負債の方が大きい債務超過なら、数式上はマイナスとなり、評価額はゼロになります。
ということは、会社の決算書の貸借対照表を見てみて、債務超過になっていたら、株価ゼロとして相続税の申告をしてよいのでしょうか?
純資産価額方式は会社の各資産を相続税評価額で評価する!
会社の決算書に載っている資産の金額は、必ずしもその資産の価値を表しているとは限りません。
例えば、ある同族会社が10年前に100万円で購入した上場株式があるとします。
現在ではその株価が10倍に値上がりしていたとしても、その株式が購入金額で貸借対照表に計上されていれば、100万円のままです。
しかし、相続などがあって、その同族会社の株式を評価する場合、その上場株式の評価額は10倍で計算します。
会社が相続税対策などで生命保険に加入している場合も要注意です。
経理の関係上、貸借対照表に計上されている保険掛金の金額(ゼロの場合も有)が、実際の保険契約の価値(仮に解約した場合に受け取ることができる解約返戻金の金額)を大きく下回る可能性があります。
会社が土地を借りている場合も同様です。
同族会社の場合には、社長の個人所有の土地の上に会社が建物を建てている(会社が社長の土地を借りている)というケースがザラにあるのですが、それにより、会社に「借地権」が発生していれば、当然それも会社の財産として純資産価額方式の評価の対象となります。
このように、同族会社の所有している資産を相続税評価額で評価して純資産価額を計算すると、債務超過ではない、というパターンが大いにあり得ます。
想う相続税理士