【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続財産が自宅のみで相続税の申告が必要な場合

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産が自宅の土地建物のみ、という場合の相続及び相続税・所得税の申告について、お話します。


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相続財産の中に不動産があると大変?

遺産分けの話し合いにおいて、各相続人の方が、できるだけ自分の財産の取り分が多くなることを要求するようなケースがあるかもしれません。

そうなると、遺産分けの話し合いをまとめるのが大変になります。

しかし、相続財産の中に不動産がある場合、その不動産があることで遺産分けがまとまりやすくなる場合もあります。

不動産の中に、要らない(と全員が思っている)財産がある場合、それを引き受けることにより、他の相続人に預貯金等の取り分を譲歩してもらうのです。

もし、その提案を拒否された場合には、逆に要らない財産を相続しなくて済みます(引き受けてもらいます)。

また、住んでいる不動産がある場合(相続人の方が、亡くなった方から土地を無償で借りてそこに家を建てて住んでいるケースや、亡くなった方のご自宅に同居していたケース)、その不動産はその住んでいる方が必ず相続したいハズです。

そこで、その住んでいる不動産を相続させてあげる代わりに、預貯金等の取り分を譲歩してもらうのです。

ただし、財産が不動産しかなく、かつ、その不動産の数(物件数)が少ない場合には、そのような交渉が難しい場合があります。

相続財産が自宅のみという場合

例えば、相続財産が自宅しかないというような場合には、普通に考えると、その自宅を分けっこする、ということになります。

相続人が長男Aさんと二男Bさんの2人だとします。

長男Aさんがその唯一の相続財産である自宅で同居していた場合、長男Aさんは、できればその自宅を相続して、そこに住み続けたいハズです。

二男Bさんにとっては、自分に関係のない不動産なので、売却により換金してそのお金が欲しい、と思うハズです。

このような場合、その対処方法として「代償分割」という方法があります。

長男Aさんがその自宅を相続し、その単独相続の代償として二男Bさんに対して代償分割金(お金)を支払うのです。

この場合、その自宅敷地自体は同居していた長男Aさんがそのすべてを相続することになるため、その敷地全体に対して、相続税の申告において、特定居住用宅地等として小規模の特例を適用することができ、330㎡まで評価額を8割減額することができます(つまり相続税が安くなります)。

ただし、この方法は長男Aさんが二男Bさんに対して現金を支払うことができる(それだけの自己資金がある)ということが条件となります。

自己資金がないことにより代償分割金が支払えない場合

自己資金がなければ、金融機関からの借入により調達してもいいのですが、その返済原資に充てられるだけの収入が今後あるかどうかが問題となります。

これらの問題がクリアできない場合、その自宅を兄弟で共有(長男Aさん50%・二男Bさん50%)で相続するという話になるかもしれません。

自宅を共有で相続し、長男Aさんは自宅を出ていき、その自宅を賃貸に出す(第三者に貸す)というのも一つの手です。

もし、同居していた長男Aさんがその自宅に住み続ける(住み続けたい)とすれば、長男Aさんと二男Bさんが同居するか、二男Bさんが同居しない場合には、二男Bさんが自分の共有持分を長男Aさんにタダで貸すか、お金を取って貸すか、ということことになるでしょう。

それも難しい、という場合には、(お金で分けられるように)その自宅を売却して、長男Aさんは別の場所に自宅を見つけるということにならざるを得ません。

この場合、共有で相続して売却すると損をすることがあります。

また、急いで売却すると損をすることがあります。

上記でお話した小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、二男Bさんが相続した分(50%部分)には適用されません(住んでいないため)。

また、申告期限前に売却してしまうと、長男Aさんが相続した分(50%部分)にも適用されません(申告期限までの居住・所有継続要件を満たさないため)。

そして、不動産を売却した場合の所得税(譲渡所得)の計算において、マイホームを売ったときの特例(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)は、二男Bさんが相続した分(50%部分)には適用されません(住んでいないため)。

以上のことから結論付けるとすれば、この自宅全体を長男Aさんが相続して、それを申告期限後に売却して、その売却代金の中からを二男Bさんに代償分割金を支払う、という方法が一番税金が安くなるモノと思われます。

想う相続税理士

上記の場合、二男Bさんは、相続税の申告期限において、代償分割金をもらっていなくても、相続税を支払わなければならなくなりますので、ご注意を(納税資金の調達が必要)。