相続税専門税理士の富山です。
今回は、土地の売買契約終了後に、売り主の方が土地を引き渡す前にお亡くなりになった場合の相続税・所得税の取扱いについて、お話します。
土地は既に相続財産ではない
亡くなった方が生前にお持ちの土地について売買契約を締結している場合、その土地は、買主の方のモノです。
ですから、その土地は亡くなった方の相続財産ではありません。
売買契約が成立しているワケですから、その売却代金が「未収」の状態ということです。
この「未収入金」(売却代金を受け取る権利)が相続税の課税対象となります。
土地の譲渡日は「選択」できる!
売買契約は終わっていたけれども、土地の引渡しが完了していなかった。
この場合、相続税では土地は既にないモノとして計算するワケですから、土地の売却に係る所得税の申告においても、生前に売ったモノとして申告する必要があるのでしょうか?
実は、土地を「いつ売ったか」については、日付を選択することができます。
国税庁HP(タックスアンサー)
No.3102 譲渡所得の申告期限
資産の「譲渡の日」
資産を譲渡した日は、原則として、売買など譲渡契約に基づいて資産を買主などに引き渡した日をいいますが、売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます。
契約の効力発生の日とは一般的には契約締結の日です。
つまり、亡くなった方が亡くなる前に売った(契約締結日に売った)と考えることもできるし、亡くなった方の相続人の方が、相続後に買主に引き渡した(所有権移転登記をした時に売った)と考えることもできるのです。
亡くなる前に売ったことにした方がトク?
契約締結日に売ったと考える場合、亡くなった方の準確定申告で売却益を申告することになります。
この場合、その申告に係る所得税の金額は「債務」として、相続税の計算上、預貯金などのプラスの財産からマイナスすることができます(相続税が安くなります)。
また、その申告に係る住民税の金額は「かかりません」。
お亡くなりになった方については、次の年に前の年の分を課税しようとしても他界されていて課税できないため、非課税となります。
想う相続税理士秘書
亡くなった後に売ったことにした方がトク?
所有権移転登記をした時に売ったと考える場合、相続人が確定申告で売却益を計算するときは、相続税の一部を経費として計上(「取得費加算の特例」と言います)することができます(相続税が安くなります)。
想う相続税理士
売却益を追加で申告することにより、所得税が増税になる場合がありますので、ご注意を。