相続税の税務調査はどうやって行われる?
想う相続税理士
相続税の税務調査では「簡易な接触」が増えてます
参考 平成29事務年度における相続税の調査の状況について国税庁想う相続税理士
この中に、次のように書かれています。
国税庁においては、実地による税務調査を適切に実施する一方で、実地調査以外の多様な手法を効果的・効率的に活用し、適正申告の確保に努めています。
特に、平成27年1月の相続税基礎控除額の引下げ等により、申告件数が大幅に増加したことも踏まえ、具体的には次のような取組を積極的に行っております。
・ 保有する資料情報等から相続税の無申告が想定される納税者等に対し、書面照会を行うことによる、自発的な期限後申告書の提出を促す取組。
・ 調査すべき問題点が限られている事案に対し、実地に赴かないで、電話や来署依頼による調査を実施し、より効率的に納税者等に接触する取組。
調査官が家にやってこない税務調査も増えているんです。
想う相続税理士
相続税の税務調査で調査官が家に来る場合は?
想う相続税理士
通常は、電話により調査の連絡が来ます。
相続税の申告書を提出する際、税理士の「税務代理権限証書」を添付している場合には、その税理士に方に電話が来ます。
調査日・調査場所・調査目的等についての通知(これを「事前通知」と言います)があります。
調査日は、相続人、税務署、税理士の都合が合う日で決定されます。
調査場所は、お亡くなりになった方のご自宅である場合が多いですね。
調査目的については、「申告内容の確認です」ぐらいしか言ってもらえません。
「○○銀行○○支店の口座について聞きに行きます」なんていう風に教えてくれることはありませんからね!
相続税の税務調査は楽勝?
いえいえ、相続税の税務調査では、調査官が、他の税金の調査に比べ、かなり狙いを絞ってやってきます。
税務署には、過去の申告データが蓄積されています。
そのお亡くなりになった方の分だけではなく、相続人や親族の方の所得についても把握しています。
そして税務署は、金融機関にそれらの方々の財産データ(残高だけではなく、取引の履歴も)について照会(問い合わせ)をします。
つまり、相続人の方々以上に、そのご一家の収入や資産の状況等を把握して、税務調査にやってくるのです。
想う相続税理士
相続税の税務調査の雑談は雑談にあらず
想う相続税理士
最初からいきなり「通帳を見せてください」「この銀行に預金があるんじゃないですか?」なんて話はしてきません。
お亡くなりになった方の生い立ちから始まって、生前のお仕事や生活、お亡くなりになる前のお体などの状況、相続人の方のお仕事や生活の状況、お亡くなりになった方と相続人との関係性、などについてのヒアリングがあります。
デリケートな話ですから、調査官もちゃんと気を遣って話をしてくれます。
何となく、昔話的な感じで話が進むので、雑談的な雰囲気がするのですが、これは、調査官にとっては、非常に重要な情報収集なんです。
書面で調べてきただけでは分からない部分について、相続人の方から直に情報を取って、内容を補足しているのです。
このヒアリングが終わった後に予定している、実際の調査・質問を実のあるものにするためにやっているのです。
緊張して、うまく回答できない方も多いです。
でも、ほとんどの人が初めての経験ですから、プレッシャーを受けるのが当然です。
とは言え、できるだけ平常心で調査を受けていただくためにも、税理士に税務調査の立会いを依頼している場合には、前もって、どのような感じで税務調査が進むのか、きちんと聞いておきましょう。
相続税の税務調査における調査官の狙いはどこ?
想う相続税理士
預貯金
想う相続税理士
相続税の考えでは、誰のものかは、名義ではなく、その実態で判断します。
相続人の名義になっていても、そのお金の移転について、税務的に問題がないかがチェックされます。
お亡くなりになった方からお金が移転したのであれば、「贈与」と言うことになりますが、この「贈与」が法的に成立しているかどうか、ということです。
相続人の名義にした、というだけでは、贈与ではありません。
それは、相続人の名義を借りた預貯金(「名義預貯金」と言います)ということになります。
贈与が成立するには、あげた方と、もらった方の、贈与・受贈の意思が必要です。
あげた方が通帳や印鑑などをずっと管理していたら、もらった方は「もらった」と認識できるでしょうか?
自分の自由にできないお金を。
また、「あげた」と相続人が説明した時期に、そのお亡くなりになった方が、既に意思能力がない状態だったとしたら、「あげた」と言えるでしょうか?
保険
これについては、申告もれになることは少ないでしょう。
問題は、お亡くなりになった方が、相続人などの親族に掛けていた保険です。
その相続人が死亡していなければ、保険金は下りない訳ですが、そのまだ下りない保険も、申告をする必要があります。
なぜなら、その保険を解約すれば、解約返戻金を受け取れる、つまり財産価値がその保険にはあるからです。
保険会社に勧められて、色々な保険に入っている場合には、どういう形態で入った保険なのか、分からなくなっている場合があります。
意図せず申告もれになっていることがあるのです。
想う相続税理士
生前のお金の動き
想う相続税理士
生前に相続人や親族がお金をもらっているのではないか、別の財産に化けているのではないか、という視点で調査されます。
相続税の税務調査は家の中の調査もあります
金庫があれば金庫、また、銀行の貸金庫の確認を行う場合もあります。
想う相続税理士
相続税の税務調査は実地調査の後も続きます
想う相続税理士
実地調査の後は税理士にお任せを
そのためには、相続税法やその他の法律が、相続財産や相続税の申告の仕方について、どのように規定しているのかが分からないと回答できませんし、また、先ほどの「贈与」のように、民法上の考え方も押さえておく必要などもあります。
これらについて、一般論で調査官に回答しても、ラチがあきません。
実地調査後の折衝は、税理士に任せましょう。
想う相続税理士
相続税の税務調査で問題が見つかる確率は?
想う相続税理士
非違割合とは、「実地調査件数」に占める「申告漏れ等の非違件数」の割合です。
申告が税法に従ってされていなかった割合、とでもいいましょうか。
この非違割合が、平成28事務年度は82.0%、平成29事務年度が83.7%となっています。
また、1件当たりの追徴税額(加算税を含めた金額)は、平成28事務年度が591万円、平成29事務年度が623万円です。
想う相続税理士
税務調査で贈与でないことを主張するには?
想う相続税理士
想う相続税理士
税法は、課税関係や課税事実を、形式ではなく、実態で判断する
想う相続税理士
実態を判断するということは、購入・使用・所有の状況を検討するということ
想う相続税理士
なぜ、子供名義にしたのか?
想う相続税理士
ウソはダメ?
想う相続税理士
一連の流れで見る
想う相続税理士
前の車を下取りに出して、新しい車を購入する訳です。
親が自分の車を下取りに出して、新車を購入し、以前の車と同じように使っている、このような状況の場合には、親が子供に車を贈与する必要性も動機もないですよね。
遠くに住んでいたら使えない
もし、親がその車を専属的に使用しているのであれば、子供の名義を借りているだけ、という色合いが強くなってきます。
親と子供が離れたところに住んでいて、その車が親の家の駐車場にいつも停められている、なんて場合だったら、それは「親の車」ですよね。
想う相続税理士
その後の処分の状況も、所有の実態を把握する決め手になる
想う相続税理士
そしてその売却代金を、親が自分の口座に入金していれば、それは「親の車だった」という感じがさらに強くなりますよね。
贈与があったのであれば、子供が「得」をしているはず
タダで車を手に入れて乗れるからお得。
子供が乗っていなかったら、子供は得していません。
どちらがその車を、他の人に邪魔されることなく、自由に使えるか、自由に処分できるか、という視点が重要です。
想う相続税理士
名義の登録は、本来、第三者に意地悪されないため
想う相続税理士
親か子供のどちらかの名義にしておけば、第三者に所有権を主張されないので、親でも子供でもいいのです。
安易に名義を決めないこと
安易に名義を決めないでくださいね!
想う相続税理士
夫が亡くなると税務署は妻の預貯金残高をチェックする
想う相続税理士
その
預貯金は
誰の
ものか?
相続税の申告をする際、まず、そのお亡くなりになった方の財産に関する書類や資料を集めよう、と考えると思います。
この場合の「お亡くなりになった方の財産」については、通常、そのお亡くなりになった方の「名義」の財産と捉えるのではないでしょうか?
預貯金の残高証明書を集めるのであれば、そのお亡くなりになった方の名前になっている預貯金口座について、金融機関で残高証明書を取るでしょう。
しかし、それだけでよいのでしょうか?
そのお亡くなりになった方の名義でなければ、本当にそのお亡くなりになった方の財産ではないのでしょうか?
お金に名前は書けません。
そして、お金は簡単に動かすことができます。
Aさんが稼いだお金だとしても、Bさんの名義で預貯金を形成することは簡単にできます。
その場合、その預貯金はAさんのものでしょうか?
それともBさんのものでしょうか?
「いやいや、これはBさんのものなんです」と税務署に主張するならば、AさんからBさんに贈与があったということになります。
なぜなら、そのお金はもともとAさんが稼いだものなのですから、当初はAさんのモノです。
それが何の見返りもなく、無償でBさんに移転しているのであれば、贈与があった(タダでもらった)ということです。
相続税の税務調査では、お亡くなりになった方がAさん、そして相続人がBさんに該当するパターンで問題になることがよくあります。
預貯金は
お金の出所
や形成原資
がポイント
になる
相続税は、形式ではなく実態で判断します。
「その財産は誰のものか?」を考える際、そのお金をBさんがAさんからもらったのであれば、確かにそれはBさんのものです。
ただし、「もらった(あげた)」ということを安易に考えてはいけません。
もらった(あげた)という贈与が成立するには、あげた方ともらう方に、贈与の意思がなければいけません。
「意思」は目に見えませんから、分かるようにして証明できるようにする必要があります。
ですから、契約書を作成したり、もらう方がいつも使っている口座に振り込んだり(いつも使っている口座であれば、もらったことをすぐに認識できた、と主張できます)する必要があるのです。
また、贈与があったということは、もうその預貯金はもらった方のモノです。
であれば、その預貯金はもらった方が管理や保管をする必要があります。
贈与があったと言っておきながら、あげた方が預貯金の通帳や印鑑を持っていたらおかしいですよね!
専業主婦の
奥さんの
預貯金残高
が多い
場合は
どうなる?
最近は共働きのご夫婦が多いですが、旦那様がお亡くなりになって、ずっと専業主婦だった奥様の預貯金の残高が異常に多い場合、それは奥さんの財産と言えるでしょうか?
「夫婦なんだから財布は一緒。専業主婦で収入がなかったとしても、家のお金を管理してきたのは私なんだから、私の預貯金の残高があったっておかしくないでしょ。これは私のお金。」とおっしゃるかもしれませんが、夫婦であれば、お金を無税で贈与できるのでしょうか?
「扶養義務者相互間の贈与税は非課税」の規定を持ち出される方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、夫婦は扶養義務者です。
ただし、この規定は、「その都度」贈与することが要件となっています。
「必要な都度贈与する」ということですから、理屈的にはお金は残らないのです。
もちろん、奥様が自分のためにお金を使ったり、貯めたりしてはいけないという訳ではありません。
しかし、それが大金であるとなると、
(1)それは贈与されたお金なのではないか?
(2)それは名義預金なのではないか?
という話が出てきます。
(1)の場合、通常の贈与(暦年贈与)の非課税枠が110万円ありますので、毎年110万円以内で増加していれば、非課税と主張できます(他の方からの贈与がないという前提です。ただし、相続開始前3年以内の贈与の場合には、贈与税が非課税でも、相続税がかかる場合があります)。
(2)に該当してしまうと、名義は奥様だとしても、実態としては旦那様のモノということですので、相続財産として申告する必要があります。