相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続放棄とその期限について、お話します。
相続人じゃなくなれば債務も引き継がずに済む
民法(一部抜粋)
第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
亡くなった方に借金などの債務がある場合、その返済義務は相続人の方に引き継がれます。
財産をたくさん相続できるのであれば、多少の債務を引き継いでもいいかもしれませんが、債務の方が多い場合、相続放棄を検討されることもあるでしょう。
民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
相続放棄をすれば、相続人ではなくなるため、財産も相続できなくなる代わりに、債務も引き継がなくてよくなります。
相続放棄には「期限」がある
民法(一部抜粋加工)
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
相続放棄には、「自分が相続人となったことを知った日から3ヶ月以内」という期限があります。
この相続放棄とは、「私は財産いらないよ」と他の相続人に伝えることではなく、自分が財産を全く相続しないという内容の遺産分割協議書に署名押印することでもなく、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出することです(そうしないと相続放棄にはなりません)。
次に相続人となった方の相続放棄の期限は?
裁判所HP(一部抜粋加工)
亡くなられた方の配偶者(夫または妻)と、その子が第1順位の相続人の場合で、その子が全員相続放棄をすると、亡くなられた方に直系尊属(父母や祖父母)や兄弟姉妹
がいれば、亡くなられた方の親や兄弟姉妹(代襲相続人を含む。)が第2順位、第3順位として順次相続人となります。従って、第2順位、第3順位の相続人も相続をしない場合は、先順位の相続人が相続放棄をしたことにより自分が相続人となったことを知った日から3か月以内に、相続放棄の申述をする必要があります。このとき、配偶者が相続放棄をしたかどうかは関係ありません。
亡くなった方のお子さんが相続放棄をした場合、亡くなった方の親や兄弟などが相続人になります。
別の面から言うと、自分の兄弟が亡くなった場合、「あいつには子供がいるから子供が財産を相続するんだな」と思っていても、亡くなった方に債務が多いため、その子供が相続放棄をした場合、自分が相続人になる(債務の返済義務を引き継ぐことになる)こともある、ということになります。
その場合には、上記にあるとおり、原則として「先順位の相続人が相続放棄をしたことにより自分が相続人となったことを知った日から3か月以内」であれば、相続放棄が可能です。
想う相続税理士