相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告の際、税務署に税務相談をして、申告をする必要があるのに申告をする必要がないと信じてしまい、無申告になったことが、国税通則法・第66条・無申告加算税の「例外規定」に該当するかどうかが争われた事例について、お話します。
想う相続税理士秘書
ザックリ言うと、申告もれや無申告になった原因が、「正当な理由」と認められれば、過少申告加算税や無申告加算税は課税されないのですが、申告しなくていいと勘違いさせた(と納税者が主張する)税務署での税務相談の際の税務署職員の説明が、その「正当な理由」に該当するかどうかが争われました。
申告が遅れても無申告加算税なんて大したことない?
出典:TAINS(Z888-2444)(一部抜粋加工)
令和4年2月25日判決
今回の事例では、税務署が相続税の税務調査を行い、申告する必要があるからと、期限後申告を勧め(勧奨し)、納税者は60,982,300円の相続税の納税しました。
その後、賦課決定された無申告加算税は、12,129,000円です。
「バレた時にちゃんと申告すれば無申告加算税なんて大してかからないだろう」なんて考えていると、大変なことになるかもしれません。
「正当な理由」の存在は納税者側が立証する必要がある
国税通則法66条1項ただし書の「正当な理由」の主張立証責任は、この定めが申告納税制度の例外であること、及び無申告加算税の趣旨からすれば、そのような例外的な事情が存在すると主張する原告が負うと解すべきである。
無申告加算税が課税されないのは、あくまでも「例外」ですので、それが認められる「正当な理由」の存在は、納税者側で立証する必要がある、とされています。
申告しなくていいと信じてしまったのは税務署職員のせい?
原告は、妻であるAにおいて、本件相続に係る相続税の申告を正確にすべく◯◯税務署で税務相談をした際、担当職員から、本件相続に係る相続税は相続人代表者Bに立て替えてもらう旨の説明(本件説明)を受けて原告自ら申告する必要はないと信じ、少なくとも、同担当職員はAがそう信じることを誘発したものであるから、国税通則法66条1項ただし書の「正当な理由」がある旨を主張する。しかし、Aが◯◯税務署において税務相談をした際の担当職員との間の具体的なやり取りの詳細は明らかになっておらず、本件説明の趣旨は判然としないことなどから、上記のとおり原告が主張するような税務相談の担当職員からの誤った説明ないしこれに類する行為があったとは認められない。
税務署で税務相談をしたという事実があり、それに基づいた認識に基づき無申告という結果になったからと言って、それだけでは無申告加算税が課税されない「正当な理由」があったということにはならない、ということになります。
相続税のことは、ほとんどの方が全く分かりません。
税務署に相談すれば、すべて解決してくれる、というモノでもありません。
相続税は、あくまでも申告納税方式ですから、自分で相続税を計算しなければなりません(税理士に依頼することはできます)し、そのためには、きちんと相続税の仕組みを理解する必要があります(理解しないと税務署の職員と話ができません)。
想う相続税理士