相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における香典と弔慰金の取扱いについて、お話します。
香典をもらっても税金はかからない
相続税の申告においては、葬式費用が「債務控除」の対象となります。
債務控除とは、プラスの財産からマイナスの財産を控除することを言います。
その控除後の正味の財産をベースに相続税を計算します。
つまり、財産がたくさんあっても、それと同じぐらい借入金などのマイナスの財産がたくさんある場合には、正味の財産ベースですとプラスマイナス0となるため、相続税はかからない、ということになります。
葬式費用は、亡くなった方の債務ではありませんが、相続の発生に伴い相続人が負担することになる費用ですので、債務控除の対象となっています。
ただし、葬式費用のうち「香典返戻費用」については、債務控除の対象外となっています。
これは、香典が課税の対象になっていないので、それに対するお返しの費用である香典返戻費用を債務控除の対象外にしている、ということです。
香典は、亡くなった方の御霊に供えられるモノですが、税務上においては、その故人は既に亡くなっていらっしゃるので、ご遺族に対して渡すもの(贈与)として取扱います。
その上で、贈与税を非課税として規定しています。
相続税法基本通達
21の3-9 社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。
弔慰金には二重の非課税枠がある
弔慰金とは、役員や従業員が亡くなった場合に、そのご遺族に対して、会社が故人を弔い、遺族を慰めるために支給するお金です。
亡くなった方の財産ではありませんが、相続の発生に伴い支給されるものですので、相続財産とみなされます(「みなし相続財産」に該当します)。
この弔慰金については、その死亡が業務上の死亡である場合には、死亡当時における賞与以外の普通給与の3年分が、その死亡が業務上の死亡でない場合には、半年分が、それぞれ非課税となります。
そして、それを超える部分の金額については「退職手当金等」として取扱います。
退職手当金等については、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、その超える部分の金額が通常の死亡退職金と合わせてこの枠内に収まれば、相続税はかからない、ということになります。
同族会社の株価の計算に注意
ご遺族の側から見た「もらうモノ」は、会社から見ると「払うモノ」です。
大雑把に言うと、お金を払うことにより、会社の財産が減りますので、会社の株価が下がります(常にではありませんが、安く評価することができます)。
亡くなった方が、そのお勤めだった同族会社の株式をお持ちだった場合、その会社の株式も相続税の課税対象となります。
その株式の純資産価額の計算上、弔慰金については負債に計上しません(安く評価することにつながりません)。
ただし、その弔慰金の金額が上記の非課税枠を超えるものについては退職手当金等に該当するとお話しましたが、その超える部分の金額については、通常の死亡退職金と併せて負債に計上することになります(安く評価することにつながります)。
想う相続税理士
まずは社内規程等のご確認を。